なぜ、失業者ではなく休業者が新型コロナで激増したのか 2つの理由:今後のカギは「サスティナブルワーク」(2/5 ページ)
新型コロナで休業者が激増している。リーマンショック時と比較すると、その差は顕著だ。なぜ、失業者でなく休業者が激増したのか? 背景に2つの理由があると著者は解説する。
休業者が突出して多かった
それに対し、今回新型コロナウイルスの感染拡大防止のために緊急事態宣言が発令された20年4月までの2年間における完全失業者数と休業者数のグラフが以下です。完全失業者数も休業者数も20年4月が最大値となっていますが、現時点においては、完全失業者数が189万人とリーマンショックのころよりもはるかに少ない数字であるのに対し、休業者数は597万と突出して高いことがよく分かります。
では、この異変はどんな背景から生じたのでしょうか。大きく分けて2つの理由があると考えます。
1つは、新型コロナウイルスの影響が一時的なものにとどまる可能性がある、と多くの企業が考えていたことです。政府からは度々、「この2週間が瀬戸際だ」という説明がなされました。実際には最初の2週間だけで見極めることはできませんでしたが、2週間とまでは言わずとも、企業としてはある程度短期間で収束できる可能性があることを視野に入れながら対策を取る必要があったといえます。
リーマンショックや東日本大震災のように、影響があった企業の大多数が壊滅的な被害を受けたということであれば、完全失業者数の方がもっと増えて休業者数はもっと少なかったかもしれません。それに対し新型コロナウイルスの場合、影響範囲は広く、日本中のほぼ全ての産業に及ぶものの、現時点で直接壊滅的被害を受けたといえるのは、飲食店や観光業などある程度限定的です。それ以外の産業では、外出自粛などによってジワジワと売上や利益が削り取られ、少しずつ追い込まれてきている印象です。
もちろん、ジワジワと削り取られる状況が続くことも深刻なダメージをもたらしますが、その元凶はウイルスという目に見えない敵であり、感染拡大さえ収まれば、ある程度は短期間で元に戻すことができるかもしれないという期待もあるでしょう。それであれば、いきなり解雇という選択をするのではなく、休業という形で耐え忍ぶ選択をすることに一定の合理性が出てきます。アメリカでは再雇用を前提としたレイオフ(一時解雇)という方法が取られていますが、日本における休業はその考え方と似ているのではないかと思います。
関連記事
- 「ブランク」や「ドロップアウト」は無意味ではない いま見直すべき、「採用の常識」とは?
就職や転職の際に、多くの企業が重視するのが、その人材が社会や企業の求める能力や規範に合致しているかどうかという点だ。そのため、規範から外れていたり、「ブランク」や「ドロップアウト」の経験があったりする人が生きづらさを感じることも少なくない。ビースタイルホールディングスの調査機関「しゅふJOB総研」の所長を務め、「人材サービスの公益的発展を考える会」を主催する川上敬太郎氏は、こうした社会を「能力適合型社会」とし、一人一人の能力の方へ着目する「能力発見型社会」への移行を提唱する。 - 「監視」や「名ばかり管理職」はもういらない 「ニューノーマルのテレワーク」に必要なものとは?
ニューノーマルの最たるものといえるテレワークだが、最近では社員の監視システムが登場するなど、旧来の「時間管理」の延長で運用する企業も少なくない。しかし、これでは新しい時代を企業が生き抜くことは難しいだろう。ようやく定着の兆しを見せるテレワークを「感染防止策」にとどめず成果に結び付けるには? 大関暁夫氏が解説する。 - 20代の転職希望者が答える「妥協できない条件」 2位は年間休日数、1位は?
就職ナビサイトなどを運営する学情が、20代の転職者に関する調査結果を発表した。20代の転職希望者が「妥協できない」と答えた条件が明らかに。3位は「年収」、2位は「年間休日数」、1位は? - オンライン面接で「一度も会わずに」新卒採用 USEN-NEXT HD人事部門がつかんだコツ
新型コロナウイルスの影響で、多くの企業の新卒採用活動が停滞する中、USEN-NEXT HOLDINGSはいち早く全ての採用プロセスをオンライン化した。全面オンライン化で得た効果、直面した課題は。 - 「脱ブラック」進むワタミ、コロナで大打撃ながらも従業員に“太っ腹”対応
新型コロナの影響が深刻だった居酒屋業界。そんな中、「脱ブラック」が進むワタミでは従業員に手厚い対応を見せた。黒字予想から一転、20年3月期は60億円超の赤字となりながらも矢継ぎ早に講じた対応は、どういったものだったのか?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.