なぜ、失業者ではなく休業者が新型コロナで激増したのか 2つの理由:今後のカギは「サスティナブルワーク」(3/5 ページ)
新型コロナで休業者が激増している。リーマンショック時と比較すると、その差は顕著だ。なぜ、失業者でなく休業者が激増したのか? 背景に2つの理由があると著者は解説する。
休業者が激増したもう一つの理由
休業者数597万人という異変が起きているもう一つの理由は、企業が自らの意思で雇用を維持しようと努めているからだと考えます。日本の企業は欧米と比べて家族的だと言われます。従業員を家族のように大切にし、安易に解雇という選択を行いません。それは間違いなく、日本企業の良い面です。
そんな日本企業の文化や心情的な側面の良さを感じる一方で、解雇したくてもできないという切実な事情も垣間見えます。コロナ禍で政府が行ったのは休業や活動自粛などの「要請」です。要請は命令や指示ではなく、あくまで自主的な判断に委ねられるものです。そのため、もし解雇すると、それは企業による自主的な判断による解雇となります。
日本では、欧州のように解雇時に相応の金銭を支払うなどのルールが明確に定められてはいません。解雇要件と呼ばれるものはありますが、その手順を踏んだとしても企業は訴訟リスクを完全に免れることはできず、解雇よりも休業という選択肢の方が現実的だと言えます。さらに、企業が雇用を維持しようとする理由として、労働市場の構造的な背景も関係していると思います。新型コロナウイルスの影響を受ける少し前まで、日本の労働市場は空前の売り手市場でした。
売り手市場となっている原因はさまざまだと思いますが、根幹にあるのは人口減少です。日本の総人口においては12年前、生産年齢人口に限れば20年以上前から減少しています。人口減少は今後も当面続くことが確実です。新型コロナウイルスの影響で、一時より有効求人倍率は減少しました。しかし、下がったとはいえ直近でも1.3倍を超えており、求職者1人に対して1.3件以上の求人がある状態です。
今後さまざまな知恵を絞って、新型コロナウイルスの脅威にさらされながらも経済を回し続けることができるようになれば、再び構造的人手不足の状態になる可能性は十分ありえます。そんな未来像を踏まえると、業績が苦しい中でも雇用を維持し続けておく必要性は高まります。
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