中国の“嫌がらせ”を受けるオーストラリアに、コロナ後の商機を見いだせる理由:世界を読み解くニュース・サロン(4/5 ページ)
新型コロナを巡って、オーストラリアと中国の関係が悪化している。もともと両国の経済関係は深いが、中国は買収や投資によって影響力を強めており、オーストラリアでは不信感が募っていた。対立が深まる今、オーストラリアが日本との関係を強化する期待もできそうだ。
ファーウェイの動きにいち早く警戒
中国は、オーストラリアの政治にも食い込もうとした。19年5月にオーストラリア史上初めて中国生まれの中国系オーストラリア人女性が連邦議会の下院議員に当選。だがこの女性が中国共産党と近い企業と関係があるとして糾弾されている。また、中国のスパイ工作員とみられる中国人が、若い中国系オーストラリア人男性を連邦議会で当選させようと画策していた疑惑も取り沙汰されている。この中国系オーストラリア人男性は結局、ホテルで死亡しているのが発見された。
もう一つ忘れてはいけないのが、中国の電気通信大手、華為技術(ファーウェイ)の問題だ。オーストラリアは、米国政府が同盟国にファーウェイ製品の排除を求めた際、真っ先に賛同した国だが、その理由は、以前から独自でファーウェイの動きを警戒していたからだった。オーストラリアの大手企業元幹部は筆者の取材に「14年に、社内のネットワークからファーウェイ製品を介してデータが不正に中国に送信されていることを察知した」と明かした。この大手企業は実際にファーウェイ側に説明を求めたそうだが、返答は「メンテナンスをしていた」というものだった。結局、同社はファーウェイと契約を解除し、政府にも通達。「それ以降、オーストラリア政府は政府関係機関や大手企業にファーウェイ機器を使わないよう非公式に通達していた」という。
とにかくこうした経緯から、最近のオーストラリアと中国の衝突は起きるべくして起きたのである。そして冒頭のように「オーストラリアに行くな」と告知したり、中国人留学生にはオーストラリア留学に慎重な判断をするよう促したりしている。また中国政府は、オーストラリア産の食肉を一部輸入停止したり、オーストラリア産大麦に追加関税を課すなどの措置にも乗り出している。さらにはつい最近、麻薬密輸の罪で逮捕されていたオーストラリア人が死刑判決を下されたことも、中国による嫌がらせの一部と見る向きもある。
こうした両国の関係は、今後さらに冷え込む可能性が考えられる。
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