「20モデル以上の新型車」はどこへ? どうなる日産自動車:池田直渡「週刊モータージャーナル」(4/5 ページ)
財務指標はほぼ全滅という地獄の様相となった日産の決算。問題に対してすでに適切な手を打ってあり、今決算には間に合わなかったものの、回復を待っているというのならともかく、ただひたすらに悪い。そうした全ての状況に対して、ようやく大筋の方針が出来、これから個別の具体策策定に着手するという状況で、未来が全く見えない。念のためだが、決して未来がないといっているのではない。日産の未来は現状、皆目見当がつかないということだ。
スリム化の打ち手はあれど、具体的な製品開発計画はなし
さて、今度は、決算発表に続いて発表された事業構造改革の中身を見ていこう。
19年12月に代表執行役社長兼最高経営責任者に就任した内田誠社長は、元々が商社出身の人なのだが、今回の改革プランも商社的な安定感のある印象は受けた。ただし、それは主にスリム化に関する部分であり、復活の原動力になるであろう製品改革の部分に関しては、まだ概念的な段階にとどまっており、説明を聞いていても見通しが開ける感じを受けない。否定ではなく判断材料が足りないので保留という感じだ。
ちなみにスリム化のロードマップとして挙げられているのは、「最適化」と「選択と集中」。前者に対しては、「生産能力の最適化」「商品ラインアップの効率化」「固定費の削減」が掲げられており、後者に関しては「コアマーケット」「コアモデル」「コアテクノロジー」となっている。要するに余分なものを減らして、本当に必要なものに絞って投資を行っていくという、とても常識的な話であり違和感はない。
具体的には工場の閉鎖と集約によって生産能力を20%削減し、現在720万台規模の生産設備を、最大能力600万台まで絞り込んだ上で、通常は540万台を前提に生産を行う。また車種を絞り、Cセグメント、Dセグメントに、EVとスポーツ系を加えたラインアップに開発を集中する。これらを総合して固定費を3000億円削減する計画だ。
関連記事
- 完敗としか言いようがない日産の決算
ズタズタの決算内容だった日産。一つの要因は、北米で販売促進費用(インセンティブ)をつぎ込んで売り上げを伸ばそうとしたことにあるのではないか。対策として、22年にはモデルラインアップの半数を電動化車両にするというがバッテリー供給は大丈夫か。20車種の新型を出すというのも、短期間で作られる新車は大丈夫なのか? - 象が踏んでも壊れないトヨタの決算
リーマンショックを上回り、人類史上最大の大恐慌になるのではと危惧されるこの大嵐の中で、自動車メーカー各社が果たしてどう戦ったのかが注目される――と思うだろうが、実はそうでもない。そして未曾有の危機の中で、トヨタの姿は極めて強靭に見える。豊田社長は「トヨタは大丈夫という気持ちが社内にあること」がトヨタの最大の課題だというが、トヨタはこの危機の最中で、まだ未来とビジョンを語り続けている。 - 強いトヨタと厳しい日産
日本の自動車メーカーは調子が良いのか悪いのか、とくにここ数年中国の景気悪化が伝えられており、その影響が心配される。全体を見て、とにかくこの逆境下で強さに圧倒されるのがトヨタで、ちょっと言葉を失う厳しさに直面しているのが日産だ。スズキとマツダは日産を見るとまだ救われるが、下を見て安心していていい状況とは思えない。概要としては各社そろって、程度の差はあれど逆境である。 - 6700億円赤字の日産自動車 待ったなしの「選択と集中」、その中身とは?
日産自動車が発表した2020年3月期決算では、純損益が6712億円の赤字に転落。“拡大路線”からの転換ができていない中で新型コロナによる危機が襲った。構造改革を進める4カ年計画では、生産能力や商品数の削減などによる「選択と集中」を加速させる。 - なぜ日産は「技術」をアピールして、「ぶっ壊せ」と言えないのか
日産の業績が悪化している。「ゴーン前会長のことがあったから仕方がないでしょ」と思われている人が多いかもしれないが、筆者の窪田氏はちょっと違うところが気になるという。それは、同社のCM「ぶっちぎれ、技術の日産」というコピーだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.