2015年7月27日以前の記事
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長く低迷していたインスタント袋麺のブレイクは、“復権”の兆しなのかスピン経済の歩き方(5/5 ページ)

これまで長く低迷してきたインスタント袋麺が、この3月から急にブレイクしている。「ステイホームの影響で売れているんでしょ」と思われたかもしれなしが、自粛解除後も売れているのだ。背景に何があるのかというと……。

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日本にとって絶好のチャンス

 毎日のように検温をして、外に出かけるときはマスクをつけ、少しだるくないかとか熱っぽくないかなど自分の体調に神経を尖らせた。「コロナ太り」を気にかけて、筋トレやジョギングにハマった人もたくさんいた。あまり動かないので、これまでよりも食事に気を使う人も増えた。

 実際、それを示すデータもある。オムロン ヘルスケア株式会社は健康管理アプリ「OMRON connect」を利用するユーザ約3万人を対象に意識調査をしたところ、なんと81.1%が「健康に関する意識が変化した」と回答。具体的にどう変わったかというと、運動やストレスをためないように心がけるようになったのとともに、「食事に気をつかうようになった」(25.5%)という回答も多かった。


健康に関する意識の変化(出典:オムロン ヘルスケア)

 もちろん、「気をつかう」のは人によってさまざまだ。栄養面に気につかう人もいれば、合成着色料とかに気をつかう人もいる。が、少なくとも全体的に「気をつかう」人が増えているのは間違いない。

 ならば、これまでカップ麺ばかりをバクバク食べていた人たちも多少は「食事に気をつかう」ことになって、カップ麺よりもイメージ的にややヘルシーな袋麺へと流れていったこともあるのではないか。

 いろいろな推論を述べさせていただいたが、ひとつだけ断言できるのは、今回のコロナ危機は、インスタント袋麺の価値が見直されたいい機会になったことだ。実際、米国などでもインスタント袋麺は飛ぶように売れている。安くて長期保存ができるインスタント食品ではなく、アレンジ次第では「食材」にもなる利便性が、withコロナ時代にハマっているのだ。

 それは裏を返せば、日本にとって格好のチャンスということだ。

 日清創業者の安藤百福氏が「チキンラーメン」を開発して以来、日本はこの分野を長くリードしてきた。その知見を生かして、「体に悪い」というネガイメージを払拭(ふっしょく)するような新たな価値を生み出すことができれば、これまで以上に世界で存在感を示すこともできるのではないか。

 袋麺ファンとしては、今回のブレイクが一過性のもので終わらず、インスタント袋麺の「復権」につながることを期待したい。

窪田順生氏のプロフィール:

 テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。

 近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。


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