長く低迷していたインスタント袋麺のブレイクは、“復権”の兆しなのか:スピン経済の歩き方(4/5 ページ)
これまで長く低迷してきたインスタント袋麺が、この3月から急にブレイクしている。「ステイホームの影響で売れているんでしょ」と思われたかもしれなしが、自粛解除後も売れているのだ。背景に何があるのかというと……。
カップ麺から袋麺へスイッチ
そこに加えて追い風になっているのが、(2)の「カップ麺よりもコスパがいい」ことではないだろうか。ご存じのように、袋麺はカップ麺よりも安い。しかし、安くてカップ麺よりも量がある。5食パックも食べ盛りの子どものいるようなファミリーにはありがたい。さらに、賞味期限も長いので保存が効く。具材を入れなくてはいけない、鍋や器を用意するのがめんどくさいというデメリットをのぞけば、カップ麺に比べてかなりコストパフォーマンスが高いのである。
また、コスパとはやや異なるが、「ゴミ」という観点からも、袋麺はカップ麺よりも優れている。当たり前だが、カップ麺は「容器」という、かなりかさばるゴミが出る。家族4人でカップ麺を食べれば潰したり、ミックスペーパーとして洗ったりとそれなりに面倒くさい。レジ袋が有料化され、マイバッグの普及率も7割に届く地域もあるという昨今の社会ムードに加えて、ステイホームでゴミが大量に増えて、ゴミ収集の人々が大変なご苦労をされているので、「ゴミを減らそう」という呼びかけもされている。
そうなれば、カップ麺の「容器」を敬遠して、袋麺に流れる人が増えても不思議ではないのだ。ただ、個人的にはこれら2つの魅力よりも意外と、今の人気につながっているのは(3)の『カップ麺よりも「体に悪くない」というイメージがある』ではないかと考えている。
つまり、コロナによって健康志向が増して、カップ麺から袋麺へスイッチしている人もかなりいるのではないか。「カップ麺もインスタント袋麺もそんなに変わらないだろ」というツッコミが飛んできそうだが、実は多くの消費者が「袋麺のほうが健康」と捉えていることが明らかになっている。
一般社団法人 日本即席食品工業協会が19年1月に公表した「『即席めん』の消費者心理調査 インターネット調査報告書」というものがある。その中で全国15〜74歳までの男女3107人を対象に「カップ麺」と「袋麺」と聞いて連想する単語を調査して、ランキング形式で30位まで紹介しているのだが、そこで非常に興味深い事実が浮かび上がっているのだ。
カップ麺では「健康に悪い/体に悪い」というネガワードが13位に入っているが、袋麺の場合は18位となっている。また、「カロリー/太る」というネガワードにいたっては、カップ麺では18位なところ袋麺では27位。「塩分」もカップ麺は19位のところ袋麺では26位。「添加物/化学調味料」にいたってはカップ麺は28位にあるが、袋麺ではなんと圏外となっている。
このイメージの「差」が3月からの袋麺ブレイクにつながっている可能性はないか。なぜかというと、この数カ月ほど、我々は「自分の健康」というものと向き合った時期はないからだ。
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