延々と自画自賛、退屈すぎる中身だからこそ見える中国の「メンツ」 〜数字で読み解く新型コロナ白書(後編):浦上早苗「中国式ニューエコノミー」(2/3 ページ)
中国政府は、新型コロナウイルスへの取り組みをまとめた白書を6月7日に公表した。内容は、あくまでも中国政府による対応の正しさを強調するというもので、対応に当たった専門家やIT企業には一切触れていない点も特徴だ。白書は5段階の時系列で構成されるが、今回は3段階目以降を紹介する。
第4段階 第2のクライマックス、武漢市の封鎖解除(3月18日〜4月28日)
3月18日 習近平国家主席が、海外からの感染流入を阻止するよう指示。全国の新たな感染者が初めてゼロとなる。
3月25日 習近平国家主席が、感染症対策と経済情勢についてヒアリング。武漢市を除く湖北省で、市をまたぐ移動制限が解除される。健康コードが「緑色」の人(行動履歴などから感染リスクが低いと判断された人。詳細は過去記事を参照。編集部注)は湖北省を出られるようになる。23省で海外からの感染者の流入が報告される。
3月27日 習近平国家主席が「新しい生活様式」の下、経済・社会活動を回復させ、損失を最小限にとどめるよう指示。
3月28日〜4月1日 習近平国家主席が浙江省を視察。海外からの感染逆流対策を強化するよう指示。
4月1日 空港、港湾、陸路の国境で働くスタッフ全員に対しPCR検査を実施。
4月4日 清明節(日本のお盆にあたる3連休)に追悼式典を実施。
4月8日 習近平国家主席が、無症状感染者の把握と対策を指示。海外からの感染逆流に対する警戒も引き続き呼びかけ。
4月8日 1月23日から続いてきた武漢市の封鎖が解除される。
4月10日 湖北省の重症・重篤患者が初めて2桁に減る。
4月14日 李克強首相がASEAN+日中韓の新型コロナ対策リーダー特別会議で発表。
4月15日 習近平国家主席が感染症対策と経済情勢をヒアリング。
4月17日 武漢市が感染者数と死者数を修正。感染者数は325人増えて5万333人、死者数は1290人増えて3869人に修正される。
4月20〜23日 習近平国家主席が陝西省を視察。
4月23日 李克強首相が一部の地域と経済情勢をテーマにオンライン座談会。
4月26日 武漢市の新型コロナの入院患者がゼロになる。
4月27日 習近平国家主席が、共産党の指導力と中国の社会主義制度が感染症対策や経済再開を有利に進めたと強調。
第4段階で経済正常化の試運転が始まる
第4段階のハイライトは3点あると、筆者は考えている。まず、海外からの感染逆流との戦いだ。中国は欧州で感染が広がった3月中旬から検疫を強化したが、同月28日には外国人の入国拒否に踏み切った。2点目は4月4〜6日の清明節の3連休だ。この期間に行われた追悼式典を区切りに、政策の軸は経済回復にシフトし、経済正常化に向けた「試運転」に入った。
そして3点目は、武漢の封鎖解除である。中国の新型コロナ対策において最初のクライマックスが武漢の封鎖であり、政府や専門家も解除の時期を慎重に探ってきただろう。封鎖から解除までは約2カ月半。日本を見ても市民としては、このくらいが我慢の限界なのかもしれない。
第5段階 With コロナ時代、ニューノーマルに移行(4月29日〜)
4月30日 北京、天津、河北省の感染リスクを1段階引き下げ。
5月2日 湖北省が感染リスクを1段階引き下げ。
5月6日 習近平国家主席が、湖北省と武漢市で治癒患者のケアや心理ケアの継続を指示。
5月8日 中国共産党が外部識者を招いた座談会を開き、習近平国家主席は、1カ月余りで感染拡大を抑え、2カ月で1日の感染者数を2桁に減らし、3カ月で武漢市、湖北省の感染収束に成功したと自賛。
5月11日〜12日 習近平国家主席が山西省を視察。
5月14日 習近平国家主席は、クラスターが発生している地域で対策強化を指示。海外からの感染逆流阻止の対策については、柔軟な運用をとるよう強調。
5月22〜28日 全国人民代表大会(全人代)が北京で開催。
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