HISは中間赤字に 9割以上減った旅行需要、回復のカギは「新しい国内の旅」:「混んでたら、今はやめて、後からゆっくり」(1/2 ページ)
新型コロナウイルスの感染拡大によって、旅行各社は大幅な収益の減少に直面している。夏の旅行シーズンを前に、都道府県をまたぐ移動制限が緩和されたことから、まずは国内旅行で「新しい生活様式」を意識した需要喚起が活発になっている。
2020年春、新型コロナウイルスの感染拡大によって、需要が一気に縮小した旅行業界。大手のエイチ・アイ・エス(HIS)は6月24日、2019年11月〜20年4月の半年間の連結純損益が34億円の赤字になったと発表。各社とも、大幅な収益の減少に直面している。一方、6月19日には都道府県をまたぐ移動制限が緩和された。まずは国内旅行から、感染対策に配慮した新しい形での需要喚起が活発になっていきそうだ。
4月の旅行取扱額は9割以上減少
HISの19年11月〜20年4月期は、売上高が前年同期比8.9%減の3443億円、営業損益は14億円の赤字に転落した。新型コロナの影響で主力のレジャー関連事業が大きく落ち込み、営業利益については、旅行事業で78億7000万円、ハウステンボスグループで31億8000万円、ホテル事業で9億6000万円の減益要因となっている。
急激な事業環境の変化に対しては、社員の特別休業対応やテレワークを実施。経営面ではコスト削減を進めるほか、雇用調整助成金などの施策や借入金による資金調達によって、手元流動性の確保を図っている。
20年3月期の業績を発表した大手企業についても、すでに決算に大きな影響が出ている。JTBの連結決算では、売上高が前期比5.8%減の1兆2800億円、営業利益は78.0%減の13億円と減収減益だった。また、近畿日本ツーリストとクラブツーリズムを傘下に持つKNT-CTホールディングスは、連結売上高が6.4%減の3853億円、営業損益は16億円の赤字に転落している。阪急交通社は、売上高に当たる営業収益が5.0%減の337億円、営業利益は86.8%減の2億3000万円だった。
4月以降は、さらに状況が深刻化している。観光庁が6月19日に発表した、主要旅行業者の4月の旅行取り扱い状況によると、海外旅行の総取扱額は前年同月比98.3%減。国内旅行も93.6%減と大きく落ち込んでいる。
4月の旅行取り扱い状況を個別に公表している企業をみると、KNT-CTホールディングスは、海外旅行の取扱額が97.9%減、国内旅行は98.5%減。ほとんどの旅行の取り扱いがなくなった。さらに、国内個人旅行については、販売額よりも払い戻し額が多かったために、マイナスの実績を計上している。HISの取扱額も、海外旅行が98.8%減、国内旅行が95.7%減と同様の傾向だった。
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