HISは中間赤字に 9割以上減った旅行需要、回復のカギは「新しい国内の旅」:「混んでたら、今はやめて、後からゆっくり」(2/2 ページ)
新型コロナウイルスの感染拡大によって、旅行各社は大幅な収益の減少に直面している。夏の旅行シーズンを前に、都道府県をまたぐ移動制限が緩和されたことから、まずは国内旅行で「新しい生活様式」を意識した需要喚起が活発になっている。
人との距離を保つ「新しい国内旅行」を打ち出す
数カ月にわたって旅行需要が激減したことで、旅行業界は厳しい状況が続いているが、少しずつ回復に備えた動きも出てきている。
6月19日、都道府県外からの誘客再開を受けて、観光庁は観光関連事業者がまとめた「新しい旅のエチケット」を公開。感染リスクを避けた移動や宿泊などを啓発するため、「旅ゆけば、何はともあれ、手洗い・消毒」「混んでたら、今はやめて、後からゆっくり」「おみやげは、あれこれ触らず目で選ぼう」などの言葉とイラストで呼び掛けるポスターを公開している。
旅行各社も移動制限の緩和を受けて、新しい生活様式を意識した発信を始めている。東武グループの東武トップツアーズは「ソーシャルディスタンスに配慮した旅行商品」の販売を始めた。特急列車や宿泊施設で、他の客との距離を保てるサービスを提供する。
具体的には、日光・鬼怒川方面に向かう「特急スペーシア」で、販売する座席数を定員の半分以下に限定。4席のボックス席を1つのセットとして販売するほか、通路を挟んだ隣に他の客が座ることも避けるために、並びを1列ずつずらすなど工夫する。また、東武グループの日光金谷ホテルでは、開業以来初めて、個室での食事提供を実施するという。
阪急交通社も「国内夏旅 再開キャンペーン」として、国内ツアーの新商品の販売を開始。7〜8月の旅行シーズンに向けて、バスの座席2席を1人で利用してもらうサービスなどを取り入れた、“ゆったり感”や“快適性”を重視した旅行商品を投入する。
HISは当面の間、旅行事業の主軸を国内旅行に移す。海外旅行のリソースを国内旅行事業に振り向けるための社内体制整備を進める。
政府は観光需要喚起策として、旅行代金の半額相当を補助する「Go To Travelキャンペーン」などを展開する方針だが、高額な委託費が問題になったことから、開始時期の遅れが見込まれている。旅行シーズンが目前に迫っているだけに、まずは各企業や施設が感染対策をしながら旅行の再開を呼び掛けるための取り組みが増えそうだ。
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