「寿司とワイン」「そばと日本酒」…… ペアリングが“コロナ後”の飲食店を救いそうな理由:食の流行をたどる(1/5 ページ)
高級レストランを中心に提供される「ペアリング」のサービス。ワインだけでなく、お茶や日本酒のペアリングも登場している。このモデルがコロナ後の飲食店を救うかもしれない。
食の流行をたどる:
「レモンサワー」「一人焼き肉」「ギョーザ」「パンケーキ」「かき氷」――毎年のように新たなブームが生まれる。これらのブームの背景を、消費者のライフスタイルの変化や業界構造の変化も含め、複合的に分析していく。
食の世界における「ペアリング」とは、ワインを中心とした飲み物と料理の組み合わせのことを指す。そして、このペアリングの裾野が広がり始めている。
コース料理の一皿一皿に最も相性のよいワインを提供するのが主流であり、前菜にはシャンパン、魚料理には白ワイン、お肉料理には赤ワインといった組み合わせが一般的だ。
それ以外にも、食材とワインの産地を合わせたり、しょっぱいものと甘口ワインといったようにあえて対照的なものを合わせたりするなど、いくつかの組み合わせがある。
昨今では、日本酒やカクテルを合わせるペアリングも登場している。また、比較的安価なお店でペアリングディナーを提供するだけでなく、「お茶のペアリング」などのようにノンアルコール市場にもペアリングは参入している。
ペアリングは消費者の飲食シーンを華やかにするだけでなく、事業主にとってもビジネスチャンスの大きいアイテムだと感じる。何より、コロナ後に飲食産業が生き残るためのヒントを提示してくれる。
これだけの種類があるペアリングの世界
ペアリングの魅力を理解できるようないくつかの事例を紹介していこう。
1つ目は、ペアリングディナーの立役者といっても過言ではない、フレンチレストラン「L’AS(ラス)」(東京・港)。
こちらのメニューは、8〜10品で構成される5000円(税別、以下同)のフレンチコースのみ。そして、5000円のワインペアリング(ノンアルコールペアリングは2700円)が提供されている。コース1本だけという潔さである。
コースそのものに魅力があるからこそ、料理に合わせたペアリングの価値が更に上がる。そう感じされてくれる人気店である。味も雰囲気も確かなファインダイニングであり、記念日やデートシーンなどに最適ではないだろうか?
2つ目は、専門店のペアリングディナーだ。
そばと日本酒を味わう「凪 ワテラス店」(東京・千代田)。同店はそば居酒屋においてペアリングディナーを提供するというなんとも興味深いお店だ。そば屋ならではの“だし”を使用した逸品に合うお酒を提供してくれる。まずは、日本酒の蔵元がつくった希少価値の高いクラフトビールで乾杯をする。揚げ物には、すっきりとした日本酒のハイボール。甘からい味が魅力の鴨すきには、すっきりとした日本酒ではなく、あえてこってりとした銘柄を合わせる……。このように、専門店ならではのこだわりが詰まったプランを提供している。その他にも、「焼肉と日本酒」「寿司とワイン」「焼き鳥とワイン」など、専門店のペアリングディナーには注目したいところだ。
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