「寿司とワイン」「そばと日本酒」…… ペアリングが“コロナ後”の飲食店を救いそうな理由:食の流行をたどる(2/5 ページ)
高級レストランを中心に提供される「ペアリング」のサービス。ワインだけでなく、お茶や日本酒のペアリングも登場している。このモデルがコロナ後の飲食店を救うかもしれない。
わくわくドキドキ感とセット
3つ目は、イノベーティブレストランのペアリングを紹介したい。外食の差別化戦略として、カウンターを中心とした劇場型レストランが挙げられる。食事は入れ替え制で一斉にスタートし、その料理とドリンクの説明をするという「ストーリー性」が特徴だ。今回紹介するのは、その草分け的存在である「81」(東京・港)。毎回、あるテーマに沿った料理だけでなく、ストーリーに合わせてドリンクを提供する。ワインだけではなく、ミクソロジーカクテル(野菜、フルーツ、ハーブなどを用いるカクテル)を提供し、そのストーリーに花を添えるのだ。こちらのお店では、季節ごとにコースが変わり、そのコースにはストーリー性がある。時にはバレエの演目をイメージしたコースを仕立て、森の中にいるシーンでは部屋中にスモークをたき、その空気を演出するのだ。
このわくわくドキドキ感は、もはや、外食ではなくエンターテインメントといっても過言ではない。
4つ目は、地域の魅力を最大限に活用したペアリングディナーである。都心部だけでなく、ローカルレストランにも注目してみたい。
沖縄県宮古島で注目されている「紺碧ザ・ヴィラオールスイート」のレストラン「エタデスプリ」だ。全国的にも注目されている宮古島出身のシェフがおり、沖縄の食材を使用したイノベーティブな料理に、沖縄本島出身のソムリエが泡盛を合わせていくのだ。酒器にも徹底的にこだわり、なんとヒレ酒には沖縄の青い魚「イラブチャー」を使用している。
地域愛のあふれるそのペアリングディナーを味わうと、「ローカルイズクール」と言いたくなってしまう。ペアリングは、地域の情報発信のツールの一つともいえるのだ。
ペアリングはノンアルコールでも成立する
5つ目は、ノンアルコール市場のペアリングだ。ノンアルコールペアリングは、ペアリングを扱うお店の多くで提供されているが、その中でも「お茶ペアリング」に注目したい。「スパイスカフェ」(東京・墨田)は、スパイスを使った料理が人気のお店だ。7皿の料理を味わうコースに、5種の中国茶を中心としたペアリングを楽しめる。
実は、アルコール愛飲者でもノンアルコールペアリングを注文することがある。ノンアルコールペアリングには、市場拡大の余地があるのではないか。
6つ目は、少し変わり種をご紹介したい。ドリンクのペアリングならぬパンペアリングを体験できる「CRAFTALE(クラフタル)」(東京・目黒)である。
同店は、一皿一皿の料理にもストーリー性があり、十分魅力的であるが、それぞれのメニューに合わせた異なる味わいのパンを提供してくれる。こういった新しいスタイルのペアリングに触れると、料理とパンとドリンクの「トリプリング」(筆者の造語)が今後登場するのではないだろうかと期待してしまう。
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