「寿司とワイン」「そばと日本酒」…… ペアリングが“コロナ後”の飲食店を救いそうな理由:食の流行をたどる(3/5 ページ)
高級レストランを中心に提供される「ペアリング」のサービス。ワインだけでなく、お茶や日本酒のペアリングも登場している。このモデルがコロナ後の飲食店を救うかもしれない。
ペアリングがなぜ注目されているのか?
このようなペアリングを提供するお店がなぜ支持されているのか? 消費者視点で3つのメリットを解説する。
1点目は、昨今の情報過多の影響による「消費者の選択疲れ」である。世の中にはおいしいお店があふれている。しかも、料理やドリンクのメニューが豊富な店も多い。その結果、消費者は何を選んでいいのか迷ってしまう。
ペアリングコースはその真逆の位置に存在する。料理もドリンクもすべて決められたものが提供され、消費者が選択するのはお店だけである。入店してしまえば、もう迷うことないのだ。
2点目は、食事の時間を最大限に楽しめることだ。例えば、ビジネスシーンの会食においては、「次は何を飲まれますか?」「もう1杯いかがですか?」などといったやりとりが大変なストレスになる。また、デートシーンでは、リードする側が注文してくれると、お酒を選ぶ煩わしさを回避してくれる。このように、ペアリングがあると、ドリンクの注文などで会話が遮られず、食事の時間を存分に楽しめる。また、ペアリングディナーは明朗会計なので、お酒を飲むたびにドキドキすることもない。
3点目は、そのお店の魅力を最大限に楽しめることだ。おすすめの料理単品だけではなく、その料理に最も相性のよいドリンクと共に楽しむことで、よりおいしく料理が味わえる。
「なぜこの一皿とこのドリンクを合わせたのか」といったおすすめポイントを聞き、想像もつかない組み合わせに驚きを感じる。さらに、ストーリーを聞くことで、料理はおいしくなり、ペアリングの価値を感じられる。また、おいしさと共に知的好奇心をもくすぐられるのだ。
ペアリングは、そのお店の究極のレコメンドメニューといえる。結果として、お店への満足値が上がり、「また来店したい」という気持ちからリピートにつながり、SNSなどでよい口コミが広がる可能性も高い。これは、事業者のメリットにもつながるのだ。
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