「寿司とワイン」「そばと日本酒」…… ペアリングが“コロナ後”の飲食店を救いそうな理由:食の流行をたどる(4/5 ページ)
高級レストランを中心に提供される「ペアリング」のサービス。ワインだけでなく、お茶や日本酒のペアリングも登場している。このモデルがコロナ後の飲食店を救うかもしれない。
事業主にとってのメリット
ここからは事業主にとっての3つのメリットを伝えたい。
1つ目は、単価が安定することだ。
ペアリングディナーの場合、あらかじめ料理やドリンクの値段が決まっている。そのため、飲み放題プランと同様、客単価が安定しやすい。
2つ目は、ペアリングディナーがお店の主力メニューになることで、原材料管理がしやすくなることだ。使用する材料が限定され、ドリンクの在庫も必要以上に置く必要がなくなる。廃棄ロスの減少にもつながる。
そして、3つ目は専門店の中でも差別化戦略に役立つということだ。
外食のコンペティターは外食だけではない。人々のライフスタイルと共に進化し続ける中食とも戦わなくてはならない。そのためには、外食でしか味わえないものを提供する必要があり、選ばれる飲食店になるための勝ち筋の一つは「専門店化」だ。しかし、今や専門店も増えてきており、付加価値をつけてさらに差別化する必要がある。その打ち手の一つがペアリングではないだろうか?
データで読み解くペアリング
では、ペアリングはどの程度認識されているのだろうか。
ホットペッパーグルメ外食総研は、全国に住む20〜59歳の男女に意識調査を行った(有効回答数は1032)。すると、ペアリングを経験したことのある消費者は19.6%にとどまった。現状では、5人に1人しか経験したことがないのだ。だが、経験者のうち76%は「また経験したい」と回答しており、満足度の高いプランだといえる。また、未経験者に対して「ペアリングを経験してみたいか?」と尋ねたところ、56.4%が「経験したい」と答えている。ここに大きなマーケットの可能性を感じている。
さらに、ノンアルコールペアリングについても調査してみたが、こちらは将来の可能性を感じさせる結果となった。ノンアルコールペアリングを経験したことがなく、今後経験してみたいと感じている消費者は、20代〜30代を中心に約6割という結果が出たのだ。アラカルト注文で、お酒を飲まないノンアルコールカスタマーは、単価が上がりにくいため、夜の料飲シーンにおいては悩ましい存在かもしれない。しかし、ペアリングプランは、若者のお酒離れによる客単価ダウンというトレンドを阻止する可能性を秘めている。
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