「寿司とワイン」「そばと日本酒」…… ペアリングが“コロナ後”の飲食店を救いそうな理由:食の流行をたどる(5/5 ページ)
高級レストランを中心に提供される「ペアリング」のサービス。ワインだけでなく、お茶や日本酒のペアリングも登場している。このモデルがコロナ後の飲食店を救うかもしれない。
新たな付加価値を提供できるか
新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、自粛生活が続き、世界中の人々のライフスタイルは大きく変化した。食生活もその一つである。外食自粛が続いた結果、内食、中食、外食のボーダレス化はさらに進み、あらためて“外食ならでは”の価値が今後は求められるようになる。
内食や中食では味わえない価値とは何か。サービスや人が介入する価値とは何か。こういったことを考えると、今後は「ストーリーテラーが重要になるのでは?」と考える。ペアリングはこういった方向性に沿ったサービスではないだろうか。
接待や会社宴会といったオフィシャルな宴会需要は、働き方が大きく変化したことにより、私的な利用と比べて回復が遅れる可能性がある。また、大型宴会の回復も遅れる可能性がある。一方で、プライベートシーン(仕事関係以外の友人・家族)や少人数の外食シーンの回復は比較的早いであろう。ペアリングはこのプライベートシーン、少人数に適したプランであるため、回復に向けた打ち手の一つとして取り入れてみるのもよいかもしれない。外食でしか味わえない外食ならではの付加価値を提供することが、今まで以上に重要であると考えている。
著者プロフィール
有木 真理(ありき まり)
「ホットペッパーグルメ外食総研」上席研究員。1998年、同志社大学を卒業後、外食チェーン店へ。6年間勤務したのちに、フリーのフードコーディネーターに。2003年、リクルートに入社し、『ホットペッパーグルメ』に従事。全国の営業部長を経たのち、2017年、リクルートライフスタイル沖縄の代表を務めると共に、「ホットペッパーグルメ外食総研」の上席研究員として、食のトレンドや食文化の発信により、外食文化の醸成や更なる外食機会の創出を目指す。自身の年間外食回数300回以上。ジャンルは立ち飲み〜高級店まで多岐にわたり、全国の食に詳しい。趣味はトライアスロン。胃腸の強さがうりで1日5食くらいは平気で食べることができる。食を通じて「人」と「事」をつなげるイベントオーガナイザーも務める。自らが「トレンドウォッチャー」として情報発信を行う。
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