1日で300万円稼ぐ“ドライブスルー魚屋”も登場 コロナ禍で見直された販売形態の魅力:長浜淳之介のトレンドアンテナ(6/6 ページ)
コロナ禍をきっかけにドライブスルーが見直されている。緊急事態宣言が解除された後も、需要がありそうだ。1日で300万円を稼ぐ“ドライブスルー魚屋”も登場している。
高級マンションの利用者が多い
約3000店の飲食店に鮮魚を卸売りするかいせい物産(東京都中央区)では、5月9日から都内の豊海水産埠頭にある自社工場で、ドライブスルー魚屋を開いている。現在は、大阪、名古屋、千葉にも拡大している。当初は毎日のように開いていたが、今は土曜日に開催している。
商品は中とろマグロ、干物、魚卵のセットが各5000円。干物小サイズ3500円。他にも、館山の漁港から直送された朝獲れの鮮魚セット、季節品の鰻の蒲焼、顧客からの声で販売するようになったフライやクリームコロッケのセットなどもある。価格はスーパーよりも2〜5割安く、品質を考えればお得感が大きい。リピーターが多く、もう8回も買いに来た人もいるそうだ。1回の開催で300万円ほどを売り上げる。
同社の宮崎成人社長によれば、「豊海では、近くにある勝どきの高級マンション街住民の利用者が多い。ドライブスルー魚屋は、曜日で開催する朝市のように定着していくのではないか」と語る。高級マンションの住民は、主に友人を呼んでホームパーティーをする用途で、魚を買っているとのこと。ドライブスルーの八百屋も肉屋も、同様な購入動機が高いのだろう。
日本初のドライブスルーは、1965年に東京・日本橋の山本海苔店が本社新社屋竣工と共に設置したものだ。当時から海苔は接待を含め贈答の需要が高かった。百貨店が夕方6時には閉まっていたのに対し、夜8時まで営業して、たいへん喜ばれたが91年の新館建設の際に閉鎖された。
本格的な郊外型のドライブスルーは、モータリゼーションの普及を視野に入れ、77年に東京都杉並区高井戸の環八通り沿いに日本マクドナルドが設置したとされているが、異説もある。
今また、新しい生活様式でドライブスルーが再評価されており、その進化から目が離せない。
著者プロフィール
長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。共著に『図解ICタグビジネスのすべて』(日本能率協会マネジメントセンター)など。
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