コロワイドの提案退けた大戸屋、再建になおも立ちふさがる“究極のジレンマ”:“いま”が分かるビジネス塾(2/3 ページ)
大株主コロワイドと対立する大戸屋。株主提案は否決されたが経営再建は茨の道。店内調理の是非、そしてもっと奥に潜む対立も。
「調理方針刷新」だけでなかったコロワイドの真の狙い
こうした状況に対してコロワイド側はセントラルキッチン方式の導入を求めたが、大戸屋は店内調理にこだわり、対立が深まったとされる。だが、調理方針を巡る対立はおそらく表面的なものである可能性が高い。
大戸屋の窪田健一社長はすでにカット野菜の導入に言及しており、店内調理の一部を見直す方針を示している。カット野菜の導入は労働環境改善が目的ということだが、これはコロワイドとの協議の中で出てきた方針と思われる。つまり大戸屋側は創業以来の方針であった店内調理について一部を放棄しても良いと考えていたことになる。
だがコロワイド側はこうした大戸屋の姿勢に納得せず、最終的には株主総会での争いに持ち込まれることになった。一連の経緯は、コロワイド側の最終的な狙いが単なる経営の合理化だけではないことを示唆している。
日本の外食産業は需要に対して店舗数が多すぎ、過当競争に陥っている。ここに日本社会の貧困化が加わったことで、果てしない安値合戦が続き、従業員の待遇も著しく悪化した。業界全体として淘汰が必須だったところにやってきたのがコロナ危機である。
すでに複数のチェーンが店舗網の縮小を表明しており、一部では業界再編も囁かれている。今後は、M&A(合併・買収)などを通じて1社あたりの規模を大きくし、店舗網の合理化を進めるしか生き残る道はないだろう。コロワイドにとっては何としても同社を完全に傘下に収めたいと考えているはずだ。
大戸屋は事業規模が小さく、時価総額はわずか約150億円しかない(7月6日現在)。このため機関投資家は同社株を保有しておらず、株主は個人投資家が多いとされる。大戸屋の株式を保有する個人投資家は大戸屋のファンである可能性が高く、店内調理を含めた大戸屋のコンセプトそのものに賛同している可能性が高い。業績不振を理由にした経営陣の刷新という株主提案が否決されたのは、大戸屋のファンである株主の影響が大きかったことを物語っている。
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