コロワイドの提案退けた大戸屋、再建になおも立ちふさがる“究極のジレンマ”:“いま”が分かるビジネス塾(3/3 ページ)
大株主コロワイドと対立する大戸屋。株主提案は否決されたが経営再建は茨の道。店内調理の是非、そしてもっと奥に潜む対立も。
店内調理、止めても貫いても茨の道
しかしながら、いくら大戸屋のファンだといっても、業績低迷が続き、自身の資産価値が毀損することを放置できる投資家は少ない。このまま同社が業績を回復させられない場合、どれだけの株主が従来の経営方針を支持してくれるのかは未知数だ。一方、コロワイド側がさらに株式を買い増し、子会社化を画策する可能性もそれなりに高いだろう。
大戸屋が独立を維持するためには、何としても業績を回復させ、株価を上げる必要がある。そのためには過大となっているコストにメスを入れなければならない。だが、コストを優先させ店内調理をやめれば、以前からの大戸屋ファンは同社から離れていくことになり、新しい顧客層の開拓を迫られる。一方、店内調理の方針を貫けば、業績のV字回復は遠のく。
さらに言えば、大戸屋の創業家がコロワイドに株式を譲渡したのは、現経営陣と創業家との間で、経営権を巡る争いがあったことが遠因となっている。実際、コロワイド側が示した取締役の候補者の中には、創業家の人物が含まれていた。
一連の対立は、大戸屋とコロワイドの争いでもあるが、コロワイドを媒介とした大戸屋創業家と現経営陣の争いでもある。上場企業である以上、株主価値を向上させられなければ経営陣はその座を守ることはできない。現経営陣に残された時間は多くないだろう。
加谷珪一(かや けいいち/経済評論家)
仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。
野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。著書に「貧乏国ニッポン」(幻冬舎新書)、「億万長者への道は経済学に書いてある」(クロスメディア・パブリッシング)、「感じる経済学」(SBクリエイティブ)、「ポスト新産業革命」(CCCメディアハウス)などがある。
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