「いきなり!ステーキ」一本足打法経営が、なんともビミョーに感じるワケ:スピン経済の歩き方(3/6 ページ)
「いきなり!ステーキ」を再建させるために、運営元のペッパーフードサービスがアレコレ手を打っている。「ペッパーランチ」を売却したり、店舗数を減らしたり、人員を減らしたり。一本足打法経営がうまくいくのかというと……。
社内の常識、社外の非常識
では、その問題とは何か。もちろん、筆者は社内にいたわけではないので、あくまで勝手な想像に過ぎないのだが、例えば「いきなり!ステーキ」の急成長で”いきなり大所帯”になったことで、それまでアットホームな雰囲気だったのが、急に組織としての厳しい規律や連帯感を求め出して社内がギスギスしてきた可能性はないだろうか。
筆者がそう考えるのには根拠がある。「3年後離職率100%」になったこの時期に何があったのか。ペッパーフードサービスって「ブラック企業じゃないの?」と感じてしまいそうな独特の風習がスタートしているのだ。
それは、「点呼」である。
同社の朝礼では、一瀬邦夫社長が「番号!」と号令をかけると、社員は一人ずつ「1!」「2!」と点呼しなくてはいけない。しかも、一瀬社長が満足しない限り何度でもやり直しを命じられる。100人を超すような大人数が集う際には、うまくできるまでかなり時間がかかるが、できるまで繰り返すという。
と聞くと、「うわっ! 完全にブラック企業じゃん」と感じる人も少なくないかもしれない。事実、18年7月29日の『坂上&指原のつぶれない店』(TBS)という番組で、この”点呼朝礼”の様子と、なぜ何度もやり直しをさせるのかという質問に、「ピシッと決まれば気持ちいいから」と答える一瀬社長の屈託のない笑顔が放映されるや、SNS上で「ブラックすぎる」と批判が殺到したのだ。
もちろん、一瀬社長からすれば、この点呼はブラックのブの字もない清く正しい取り組みだ。19年3月20日の社内報の中で、当初は店長会議で人数を知るために始めたことだが、今ではペッパーフードサービスの社風をつくる上で欠かすことのできない、独自の取り組みだと、以下のように誇らしげに語っている。
「途中でつっかえるとまた最初からやり直しになり、それを何度も命じられるのです。このようなことから、発声トーンの声出し練習、連帯感の共有、更に身体と脳のスイッチがオンされる瞬間がきます。(中略)私たち外食産業で点呼が日常で行われている会社を私は知りません」
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