「感染リスクが高い」と指摘されても「バイキング」を続々再開 その執念と感染予防策に迫る:長浜淳之介のトレンドアンテナ(5/5 ページ)
コロナ禍で自粛していた「バイキング」が続々と再開されている。一方で「感染リスクが高い」という声もある。各社は悩みながらも徹底した対策をしている。
ホテルの立食パーティーは?
バイキングで忘れてはならないのは、ホテルの立食パーティーである。ビュッフェ台に参加者が殺到し、立ち食い形式で交流するので、濃厚接触が避けられない。そのため、各ホテルではバイキング形式の宴会を休止しており、再開には非常に慎重だ。
帝国ホテルは1958年、北欧の食べ放題レストランを日本で初めて導入し、親しみやすいように“バイキング”と名付けてヒット業態に育てた。
その元祖バイキング店の系譜を継ぐ「インペリアルバイキング サール」は、しばらく休業していたが、7月20日から再開予定だ。同社では、元祖にふさわしい内容で楽しんでもらいたいと企画を練っているという。
ホテルニューオータニ東京では、3つのバイキングがあり、対応が分かれた。「タワービュッフェ」は休業中。「ザ・スカイ」は7月10日から再開して縮小営業。「ガーデンラウンジ」は緊急事態の間もランチのみの営業。
レストランの取り組みとしては、入口への消毒液設置、席の間を空けるソーシャルディスタンス、マスクケース配布、入店時間の分散、QRコードによるメニューの提示などを行っている。シェフサービスでは万全を期すため、フェースガード着用、ビュッフェをイメージしたワンプレートメニューの導入、空気清浄機の設置(一部店舗)といった対応を行っている。
宿泊特化型のビジネスホテルでは、無料の朝食バイキングを売りにするチェーンがある。
東横インは約320の店舗を有するが、地元の食材を使う健康を考えた朝食が好評だ。
しかし、現在は共用のトングや箸を使うバイキングを基本的に休止している。数点の料理をプレートに盛る、弁当のような折箱スタイルにする、料理にラップを掛けた小皿を積み上げて好きなものを選んでもらう、などといった方法を採用している。基本的にはケースバイケースで対応しているようだ。また、朝食会場のテーブルの間を空けて減席する一方、部屋でも食べられるようにした。
ルートインホテルズは318のホテルを展開するが、主力の「ルートイン」では30品以上を提供するリッチな無料朝食バイキングを継続している。会場の入口に消毒液を設置。顧客は手を消毒し、衛生用手袋を着用。ソーシャルディスタンスを守り、料理を取る。トングは30分で交換する。また、宿泊者が20人以下の時にはご膳で提供するケースもあり、臨機応変に対応している。
このようにバイキングを提供する各社は、さまざまな工夫で信頼を取り戻そうと懸命だ。しかし、小規模なドリンクバーやサラダバーを設置しているフルサービスのレストランの中には、何の対策もしていないところも散見される。
バイキングが信頼を回復するためには、そうした店まで感染防止対策を徹底する必要があるのではないだろうか。
著者プロフィール
長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。共著に『図解ICタグビジネスのすべて』(日本能率協会マネジメントセンター)など。
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