「資産寿命」確認アプリを出した野村HD デジタル化の次の一手:LINEから学んだ野村(1/2 ページ)
野村HDの未来共創カンパニーは、6月29日に、カンパニーとして初となるプロダクト、資産管理スマホアプリ「OneStock」の提供を開始した。未来共創カンパニーとはどんな組織なのか。そして、どこを目指すのか。さらにデジタル対応へ、どんなスタンスで取り組むのか。カンパニーを束ねる池田肇執行役員に聞いた。
野村ホールディングスの未来共創カンパニーは、デジタル化などの技術を社内横断で推進する組織だ。これまでも、野村がLINEと組んでスタートしたLINE証券などに関わってきたが、6月29日に、カンパニーとして初となるプロダクト、資産管理スマホアプリ「OneStock」の提供を開始した(記事参照)。
未来共創カンパニーはこれらのアプリでどこを目指すのか。そして「三度目のトライ」と言われることもあるオンライン化、デジタル化へ、どんなスタンスで取り組むのか。カンパニーを束ねる池田肇執行役員に聞いた。
――未来共創カンパニーとはどんなミッションの組織なのでしょうか。
池田氏 未来共創カンパニーは2019年4月に発足しました。野村では、もともとオンラインサービスはやっていたし、グローバルでDXなどにも対応していましたが、特に日本国内においては、個人向けのデジタル対応が重要なポイントになってきています。日本の金融機関は基本的には対面を前提としてサービスを提供しています。一方で、多くの人が、金融以外でもアプリやスマホにシフトしています。ダイレクトに我々の価値をお客さまに届ける。これが加速度的に増えるだろう。お客さまとともにサービスを作っていくという意味で、共創という名前にしました。
部門横断で、いろんな部門のニーズやコンテンツ、サービスをつなげて、お客さまに提供します。LINE証券やデジタル資産などについても、カンパニーとしてサポートに取り組んでいます。
――未来共創カンパニー単体として、初めてのプロダクトが資産管理スマホアプリの「OneStock」です。資産の見える化を実現し、資産が何歳まで持つかを「資産寿命」という形で表現しました。このアプリの狙いはどこにあったのでしょう。
池田氏 子供が生まれたので、資産運用を始めようと決意して相談に行くと、最初に金融資産はどのくらいのお持ちですか? と聞かれます。その後に、いくらくらいの資産を運用されますか? と聞かれますが、答えられないですよね。多くの人がそこでつまずいています。
ストレスなく入力できる内容で概要を知れるという意味で、資産寿命というのは分かりやすいものです。資産寿命を計算してみて、「自分は70歳だった、80歳だった」というのが見えてくると、これは相当まずいなと思うでしょう。しかし、年収を増やそうと思っても、なかなか増やせるものでもないので、貯金をしたり、働く年齢を伸ばしたり、運用で1%伸ばせたりすると、資産寿命も変わってきます。
こうしたシミュレーションをして、資産寿命が90歳くらいになると、これを目処として、利回りの方針や運用額の目処などが見えてきます。そこまで自分で把握できたら、あとは実際にやるやらないはご本人次第です。
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