古典的な手口で「30億円」! なぜコロワイドの会長はコロッと騙されたのか:スピン経済の歩き方(4/5 ページ)
また、企業の経営者が詐欺にだまされてしまった――。外食チェーンを展開するコロワイドの蔵人金男会長である。詐欺の手口は「古典的」なものなのに、なぜだまされてしまったのか。その背景に迫ってみたところ……。
カモになる人たちの本質
こういうウサンくさい話は個人的には大好物なので、男の口から語られる「戦後の裏経済史」を時が経つのも忘れて聴き入った。ただ、その一方で頭の中には「ああ、いつものやつね」とシラけたリアクションをしているもう一人の自分もいた。
「これは例の怪しいM資金ではない」という枕詞から始まる詐欺話は、新人記者だった22年前から嫌というほど耳にしていたからだ。「基幹産業育成資金」というのもベタなフォーマットで、昭和の時代から「重要産業育成資金」「近代促進支援基金」「大蔵省特殊資金」など、ほぼ同じコンセプトの詐欺が氾濫している。取材テーマとしては目新しくもなんともない。
すると、そんな筆者の心中を察したのか男はあきれた感じで、「基幹産業育成資金」がほしくてしょうがないという大企業経営者たちの話をしてくれた。彼らは筆者と異なり、この話を疑うことは一切なく、むしろ「待っていたよ、ようやくきたか」くらいのリアクションで、本気でお声がかかるのを待っている人もいるという。
「みなさん、一度や二度、このような秘密資金があることを聞いたことがあります。そして、自分にはそれを受ける資格があると信じて疑いません。自分の会社は間違いなく日本経済のためになっているという自負があるので、それを支えるのは日本政府としては当然だと考えているんです」
このような傾向は、業界のリーディングカンパニーを率いるスゴ腕経営者や、一代で巨大企業に成長させたカリスマ創業社長になればなるほど顕著になっていくという。それくらい自分の力を過信しなくては、企業経営などできないのかもしれない。
いずれにせよ、このような「国から支援を受けるのが当たり前」という日本の経営者特有の思考回路があるから、「M資金」のような古典的詐欺が今でも通用してしまう部分は否めない。
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