コロナ機に大手でも採用の「社外プロ人材」 人事領域での活用ポイントは?:ポイントは「副業」ではなく「複業」(4/5 ページ)
コロナを機に増えていきそうな、「社外人材の活用」。導入すべき企業や、人事領域で活用するポイントとは? 「人事の複業」として複数社で活躍する「マイクロ人事部長」の高橋実氏が解説する。
成功する3つのポイント
「外部の人事コンサルタントを入れて見たが、うまくいかなかった」――これは筆者が経営者からよく聞く言葉です。外部のプロ人材を活用しようとしながら、うまく使いこなしている企業はまだ少ないのではないでしょうか。筆者は、「人事のプロ人材」の活用成功のポイントは、以下のような3つの点だと考えています。
(1)プロ人材を「組織の中にいる人」として活用する
最も大きな成功ポイントは、プロ人材を正社員と同様に「組織の中にいる人」として扱うことです。これが、外部コンサルタントを活用するときと大きく違う点です。企業によっては、外部の人材だからと提供する情報を制限したり、スキルを持っているのに業務の依頼を遠慮したりして活用しきれず、結果が出ない事例を多く目にします。一方、プロ人材の方でも「組織の中にいる人」という意識をするべきです。例えば、社内での打ち合わせで「うちの会社」と呼ぶとか、社員と雑談をして打ち解けるとか、はたまた率先して雑務を引き受けるなど、小さいことですが、社員から「同じ仲間」と信頼を勝ち得ることに積極的に取り組むべきです。
また、企業では、時として悪策を打ってしまうこともあります。これにプロ人材が遠慮せずしっかり指摘をすることも大切です。企業の中の人(社員)は、上司をおもんぱかって反対意見を言いにくいですし、外部コンサルタントは、企業の依頼を受けて業務を行うので、悪策に対して意見が言いにくい傾向にあります。正しく企業を導くためには「良くないものは良くない」と勇気をもって指摘することも重要なのです。
(2)プロ人材のスキルを組織に定着させる
「人事のプロ人材がいるのだから、全て任せてしまえばいい」と、全てを丸投げしてしまう企業も中にはあります。しかし、組織・人事の課題は、いくら改善施策を企画しても、その上で現場の社員が変わる必要があるのです。いくら優秀な人事のプロ人材でも、社内の協力なしでは施策の効果も限定的になってしまいます。人事のプロ人材と社内のステークホルダーが共同で改革にあたることが必要です。
また、優秀な人事のプロ人材を活用するのであれば、社員と一緒に業務を行わせ、豊富な知識と経験を持つ人事のプロ人材のナレッジシェアを受けることをおすすめします。人事のプロ人材は格好の見本です。自社にナレッジを吸収し、組織力を上げることで人事部門の成長につながります。筆者は、可能な限り社員と協業し、ナレッジシェアをするように努めています。
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