KDDI「ジョブ型移行」が暗示――“企業社会で居場所消滅するサラリーマン激増”の未来:“いま”が分かるビジネス塾(1/3 ページ)
KDDIが「ジョブ型雇用」導入を表明。筆者はこれが日本型雇用の崩壊につながると指摘。企業社会で居場所が消滅するのはどんな人か。
KDDIが、業務に対して処遇する「ジョブ型雇用」を導入する方針を打ち出したことが話題となっている。これは事実上、日本型雇用の崩壊であり、今後は多くのビジネスパーソンがキャリア戦略の根本的な見直しを迫られることになるだろう。
ジョブ型化=日本型雇用の崩壊
同社には約1万3000人の正社員が勤務しているが、今後、段階的にジョブ型の雇用に移行する。ジョブ型の雇用は業務内容を明確にした上で、成果に対して賃金を支払うという雇用制度であり、欧米企業では一般的な形態といってよい。
日本では一般的に、雇用形態には社員であることそのものに賃金を支払うメンバーシップ型と、職務内容に応じて賃金を支払うジョブ型の2つがあるなどと説明されている。だが本来はこうした区分など存在しないと思ってよい。日本型の特殊な雇用制度にあえて名前を付ければメンバーシップ型になるというだけの話であり、基本的には業務に対して賃金を支払うというのが世界の常識である。
今回、KDDIがジョブ型の雇用形態に切り替える方針を表明したということは、いわゆる日本型雇用を撤廃することと同じ意味になる。日本型雇用は、終身雇用、新卒一括採用、年功序列の3つを特徴としているが、この3つの慣行は経済成長が半永久的に続かない限り、維持することが難しい。
日本は人口減少から既に経済の縮小フェーズに入っており、今後、企業業績が伸び悩むことは確実な情勢となっている。こうした環境においては、業務に対して賃金を支払う方式にしなければ総人件費を抑制できない。日本型雇用が限界に近づいていることは、既に多くの人が感じていることだが、従来の雇用慣行の継続を求める声は多く、制度改革は進んでいなかった。
KDDIは今回の措置について、コロナ危機を直接的な理由にしているわけではないが、コロナ危機が新制度の導入を後押しした可能性は高いだろう。他にもジョブ型への移行を検討している企業が増えており、結果的にコロナが時代を変えるきっかけになっている。
関連記事
- 「何でもスクショ」な若者と「いつでも電話」中高年の意外な共通点――日本特有の“使えない人材”とは
「何でもスクショを飛ばして済ます」若者が話題に。ただ根底の問題は「いつでも電話」してしまう中高年と一緒と筆者は指摘。日本企業の人材、ひいてはマーケティングに横たわる課題とは? - コロナ禍転職不況、中でも「特に厳しい意外な人材」とは?――独自データで分析
コロナ禍で転職市場が悪化、急速に買い手市場に。中でも求人が特に激減している「人材の層」があるという。dodaの独自データから分析。 - 終身雇用では幸せになれず、でも大企業にしがみつくしか……日本企業の“残念マネジメント”データで解明
働く人の幸福・不幸せ度を調査。終身雇用で幸せ度が下がるなど意外な結果が。日本企業独特の「残念マネジメント」をデータで解明。 - ヤフーの副業人材募集、真の狙いは――人材部門幹部に直撃
ヤフーが副業人材の募集を開始。企業側、そして応募側のメリットと課題とは。人材部門幹部に聞いた。 - 印鑑業務を止めるだけで日本人が休暇を1週間増やせる深い訳
東北大が押印廃止で事務をオンライン化。こうした生産性向上で筆者は「1週間分の休み」が増えると試算。欧米で取れる長期休暇が日本で取れない真因をそこに見る。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.