禁止か買収か TikTokがトランプの目の敵にされる「4つの理由」:世界を読み解くニュース・サロン(4/6 ページ)
人気アプリ「TikTok」を巡って、米中の混乱がさらに深まっている。なぜ米政府はTikTokの禁止や買収に言及しているのか。トランプ大統領がこのアプリを禁止したい理由は4つある。TikTokに逃げ道は残されておらず、こういった締め付けは今後も続く可能性が高い。
トランプがTikTokを禁止したい、4つの理由
ではなぜ、トランプはTikTokを禁止にしたいのか。その理由は大きく言うと以下の4つである。
- 個人データが中国側に取られ、安全保障の脅威になるから
- 新型コロナに関する中国への報復
- 大統領選に向けて、トランプのスタイルである「敵を作ってたたくことで支持を伸ばす」というやり方にTikTokがはまった
- 米国で大勢が使う人気アプリだけに、選挙で内政干渉のツールとして中国に悪用されるから
(1)については、TikTokを運営するバイトダンスが中国の首都・北京に本社を置く企業だけに、個人情報は中国政府が求めるまま提供することになるという指摘だ。ユーザーから得る個人情報をバイトダンスが受け取り、中国政府に流れる可能性もある。
中国には、2017年に制定された国家情報法という法律がある。この法律では、第7条で「個人や企業は政府の情報活動には協力しなければならない」と定め、第14条では「情報機関が国民に協力を要請できる」としている。つまり、TikTokで集めたデータを中国政府に提供せざるを得なくなる、と指摘されているのだ。これは全ての中国企業に当てはまるだけに、中国と取引のある日本企業関係者も知っておくべき法律だろう。
さらにこんな話もある。18年、バイトダンスが中国国内向けに提供していた人気アプリが、政府から「下品」と指摘されて停止させられた。その際、バイトダンスの創業者であるチャン・イーミンCEO(最高経営責任者)は「中国共産党に今後さらに深く協力をします」という文書を公開させられている。
ちなみにバイトダンスは、米国人を役員として迎え入れるなど米国政府を意識した人事なども行ってきたが、効果は薄かった。直近では、本社を英国に移す提案まで出ているという。
(2)は、冒頭のトランプの発言である。米中の覇権争いのカードとして、トランプは禁止をチラつかせている。20年1月、中国は貿易交渉のフェーズ1(第1段階)として2年で2000億ドル(約22兆円)の米製品の追加購入計画などを約束していたが、新型コロナの混乱で実現していない。大統領選までに目に見える成果として、トランプはこの合意を進めたい。そのため、TikTokの禁止措置で中国側の尻をたたきたい。
(3)については、新型コロナ感染拡大を受けて、現在、米国では中国に対して不快感を持つ人が増加している。20年2月にギャラップが行った調査では、米国人の67%が中国を好意的に見ていないと回答している。そして7月30日のピュー研究所の調査では、73%の米国人が中国を否定的に見ていることが明らかになった。2年前は、中国を否定的に見ていた米国人は47%だったことを考えると、米国人の対中意識はかなり悪化している。
それを踏まえ、トランプは中国をたたくことで大統領選に向けて支持を伸ばしたいのである。トランプといえば、敵を作り上げて、そこを攻撃することで支持を固めるのがスタイルだ。そのカードとして、TikTokを使っている。
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