デジタル時代、顧客の参加で変わる「4P」 ユーザーのハッキングまでも認める「共創」とは?:「新時代」のマーケティング教室(4/5 ページ)
マーケティング理論として知られる「マーケティング・ミックス」(4P)。デジタル時代にどう変わっている? 東京都立大学経済経営学部の水越康介教授が解説する。
例えば、キーエンスといえば顧客企業の現場に入り込み、問題解決のための新しい製品を開発提案する強い営業部門を有することで知られている。今日におけるデジタル技術やインターネットの発達は、インサイドセールスや顧客データベースを充実させ、こうした営業部門をますます支援することになっているといえるだろう。
営業と関連して、企業の持つ資産と顧客ニーズのマッチングを狙うワークショップやオープンイノベーションの仕組みも共創的な場となる。
富士フイルムでは、社内でのR&D部門と個別の事業部門を結び付ける試みの中で、当初は社内で行われていたワークショップを拡大し、顧客にも開かれた「Open Innovation Hub」という仕組みを発展させてきた。ファッションデザイナーの中里唯馬氏がOpen Innovation Hubを訪問したことがきっかけとなり、同社のフィルム技術をベースにした加飾フォルムは衣装に取り入れられ、パリコレでも発表され話題となった。
また、20年2月に英国のWazokuという企業と提携した米国のInnoCentiveは、問題解決を求める「シーカー」とその課題に応える「ソルバー」をマッチングさせる世界的なオープンイノベーションの仕組みを構築している。最近であれば、新型コロナウイルスのワクチン開発に関する依頼も特集されており、思いがけない知見や技術の提供が求められているようだ。このように顧客の参加は、お互いにとって思ってもみなかった新しい発見や用途の開発につながっているのだ。
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