本当にAppleは“悪者”なのか 「フォートナイト」開発元の”宣戦布告”に覚える違和感:本田雅一の時事想々(1/4 ページ)
Epic GamesとAppleの争いは、「AppleがUnreal EngineごとEpic Gamesを自社プラットフォームから排除しようとしている」という話が出るほど、拗れてきた。問題の本質は……?
Epic Gamesが提供している人気ゲーム「Fortnite」(フォートナイト)が、規約違反によりAppleのアプリストア「App Store」、Googleの「Google Play」から8月13日(米国時間)に削除された。Epic Gamesが独自の課金システムを導入したところ、AppleとGoogleへの手数料の支払い(課金額の30%)を回避する仕組みと判断されたようだ。
ITmediaのいくつかの記事で伝えられている通り、AndroidアプリはEpic Games自身のサイトからダウンロード可能だが、iOSアプリはAppStoreを通じてのみしかアプリを取得できない。そのためAppleのデバイスでは現在、新たに同ゲームをダウンロードできない状態となっている。
これを受け、Epic Gamesはすぐに両社を独占的地位の濫用(らんよう)で訴え、3億5000万を超えるFortniteユーザーに対し“支配からの解放”を求めて立ち上がるよう呼び掛けて話題になった。
週が明けて17日(米国時間)になると、話はさらに拗れていた。筆者がSNSで最初に目にした情報は「AppleがEpic GamesをiOSとMacの開発コミュニティーから追放。Epic Gamesが無償で提供し、多くのゲームが活用しているライブラリ『Unreal Engine』がiOSとMacでメンテナンス不能となり、Appleのデバイスではゲームが遊べなくなる」という違和感を覚える内容だった。
しかし、この“違和感”こそが今回の騒動における本質なのかもしれない。
iOSユーザーを人質にしている?
情報の発信源はすぐに見えてきた。Epic GamesのTwitterアカウントによると、Appleから「開発者向けライセンスの規約違反となっている現状を改めなければ、8月28日に開発者アカウントを凍結する」と通告されたという。
Unreal Engineは品質の高さや扱いやすさで評価が高い上、Epic Gamesが無償化したことで業界標準として定着したゲーム開発用ライブラリセットだ。これを用いて開発されているゲームは数多い。
Epic Gamesの開発者アカウントが凍結されれば、Unreal Engineの開発を継続できなくなり、結果的にiOS/macOS向けに提供されているUnreal Engineを用いたゲームの開発に大きな影響を及ぼすと、Epic Gamesは主張。米連邦地裁に対し、Appleを独占的地位の濫用で訴えた先の訴訟に対する報復措置だとして、アカウント凍結の取り下げを申し立てた。
つまり、Appleが報復として自社プラットフォームからEpic Gamesを追放し、それがFortniteだけではなく、より幅広くUnreal Engineを用いたゲームに広がり、ゲームコミュニティーにダメージを与えると訴えている。
Epic Gamesは13日、独自の課金システム「Epic ディレクトペイメント」を導入。App Store、Google Playを経由しない場合、最大20%の割引を適用するとユーザーにアピールしている=同社のWebサイトより
Epic Gamesからすると、Appleという強大な敵が、これまでユーザーが支払っていた料金の3割を召し上げていただけではなく、そのビジネスモデルに異議を唱えたら、今度は支配力を行使し、Fortnite以外のゲームにも及ぼすパワーを使って“つぶしに来た”。到底承服はできないので徹底抗戦するぞ、というわけだ。
この情報が伝言ゲームのように広がり、さまざまな解釈のもとに拡大していく中で「AppleがUnreal EngineごとEpic Gamesを自社プラットフォームから排除しようとしている」という文脈へと変化していったのだろう。
その背景には、Epic Gamesが今回の行動を正当化し、Fortniteファンたちに協力と理解を求めたことがある。アプリがストアから削除された13日、同社はジョージ・オーウェルの小説「1984」を元にしたAppleの伝説的なCMを皮肉り、ビッグ・ブラザー(Apple)の支配から解放されるための戦いに自分たちは挑んでいく──というパロディー動画を公開し、話題を呼んだ。
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