本当にAppleは“悪者”なのか 「フォートナイト」開発元の”宣戦布告”に覚える違和感:本田雅一の時事想々(2/4 ページ)
Epic GamesとAppleの争いは、「AppleがUnreal EngineごとEpic Gamesを自社プラットフォームから排除しようとしている」という話が出るほど、拗れてきた。問題の本質は……?
用意周到だったEpic Gamesの戦略
もっとも、一連の流れはあらかじめEpic Gamesが想定していた通りと推察される。独自の課金システムを準備し、ユーザーが割引価格でゲームアイテムを購入できるようにしたことで、Fortniteはストアから削除された。禁止事項にあたることはEpic Gamesも承知しており、即座に削除されることは分かっていた上でストアに登録している。
13日に削除されると、すぐにAppleからゲームコミュニティーの住人を解放する抵抗運動を始めると発表。動画は前述したようにパロディーだが、Appleを批判するための理論武装を強化する資料まで用意していた。
そして同日中に司法の場に提訴。この実にスピーディーな展開は、削除から提訴までのシナリオをあらかじめ描いていたからと考えるのが自然だ。
Appleの開発者アカウントは、登録することで次期OSの開発者版を入手でき、開発ツールや情報にもアクセスできる。Epic Gamesはこれらにアクセスできなくなると、Unreal Engineを最新の環境に対応できなくなると訴えているわけだ。契約違反状態が続いたアカウントが凍結されたことは過去にもあり、Epic Gamesとしても予想していたに違いない。
AppleがEpic Gamesに送った警告は「Apple Program License Agreementの違反を是正し、引き続きプログラムに参加していただけることを願っている」というもので、期限までに契約違反を正せばアカウント凍結は行わない。
Epic Gamesは「報復行為」と主張するが、以前から存在していた規約に違反した状態が続くアカウントを凍結することを報復とはいわない。あらかじめ合意していたルールに違反しているのはEpic Gamesだからだ。
彼らはこうした展開になることを予想した上で、世論を巻き込む戦略を練っていたのではないだろうか。というのも、同じようにストアから削除したGoogleに対して提訴はしたものの、パロディー動画などは用意していない。
“解放戦線”で世論を味方につけるための仮想敵として、Appleを際立たせたかったのではないだろうか。
そもそもAppleが自社プラットフォーム向けUnreal Engineの開発を滞らせる理由がない。App Storeに登録されているゲームはもちろん、定額ゲーミングサービス「Apple Arcade」に登録されているアプリにもUnreal Engine採用ゲームは少なくない。
自社プラットフォーム向けのゲーム開発に貢献しているライブラリの開発を制限する理由などない。Appleが「違反を是正し、引き続きプログラムに参加していただけることを願っている」と応じているのは、そのためだ。
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