店内は客が少ないのに25年連続増収 西松屋がコロナ禍でも絶好調の理由:「アパレル」「子ども服」「小売業」は三重苦か(7/7 ページ)
コロナ禍でも業績好調の西松屋チェーン。店内は客が少ないのに、なぜ成長を続けられるのか。同社の“非常識経営”に迫る。
西松屋が変えた繁盛店の常識がコロナ禍の繁盛店条件に
西松屋の経営には、コロナ禍で生き抜くための知恵があふれています。
その知恵は、業界の常識を覆す非常識経営ノウハウと言ってもいいでしょう。最後に、コロナ後の経営のヒントをまとめます。
(非常識経営その1): 購買意欲をあおるような売り方はしない
接客、ワゴン、チラシなどにできるだけ頼らない店づくりをして、EDLP(エブリデイロープライス)を徹底する店こそがいい店という考え方。
(非常識経営その2): 行列ができるような店は作らない
運転が得意でない女性でもストレスなく来店できるような脇道に、目立たないように出店するという考え方。店内の見通しが良く、ソーシャルディスタンスも保てる売り場がいい店である。
(非常識経営その3): 個性的なデザインの商品は作らない
より安く、より良いものを届けることが西松屋の使命。シンプルで飽きのこないデザインにすればコストは最小限に抑えられるし、お客さんにも喜んでもらえる。
(非常識経営その4): 現場が必要以上に頑張らなくても売れる仕組みを作る
現場でのユニークな工夫は、予想以上に現場の負担につながることがある。店長には売り上げ至上主義ではなく、日々のオペレーションの遂行率を求める。PDCAをまわすことが重要である。
このような経営を徹底することで、同社の店長は午前10時前に出社し、夕食を食べられる時間には家に戻れているそうです。これは、小売業の社員としてはかなり働きやすい環境といえます。働き方を改革できているのも業界では先進的な取り組みだったと言えます。
現在の西松屋は、小学校高学年向け商材を強化することで、さらなるターゲットの拡大を進めています。
加えて「回転型カーシート」(値段は2万2000円台)の開発などにより、高単価なPB商品の投入も積極的に行っています。
さらに、香港に拠点をおくドラッグストアチェーン、ワトソンズへの卸(当面は香港にある同社の250店舗にて消耗品を中心に販売)をスタートさせ、アジアを中心とした海外へのPB商品販売を強化しています。今後は日本だけでなく世界へ商圏を拡大させ、収益確保を進めていくようになります。
日本では店舗戦略を軸にして限界まで出店し、今後は世界に商品を展開させていくことになります。しかも、売り上げ至上主義ではなく、着実に同社の戦略を淡々と進めていくやり方に変わりはありません。
売り上げよりも効率を重視する経営。
アフターコロナの論議が盛んになってきていますが、これからの経営には大きなシフトチェンジが求められます。同社の常識を打ち破る経営からコロナ時代に必要な知恵を学び、自社の経営に活用していくことをお勧めします。
著者プロフィール
岩崎 剛幸(いわさき たけゆき)
ムガマエ株式会社 代表取締役社長/経営コンサルタント
1969年、静岡市生まれ。船井総合研究所にて28年間、上席コンサルタントとして従事したのち、同社創業。流通小売・サービス業界のコンサルティングのスペシャリスト。「面白い会社をつくる」をコンセプトに各業界でNo.1の成長率を誇る新業態店や専門店を数多く輩出させている。街歩きと店舗視察による消費トレンド分析と予測に定評があり、最近ではテレビ、ラジオ、新聞、雑誌でのコメンテーターとしての出演も数多い。
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