店内は客が少ないのに25年連続増収 西松屋がコロナ禍でも絶好調の理由:「アパレル」「子ども服」「小売業」は三重苦か(6/7 ページ)
コロナ禍でも業績好調の西松屋チェーン。店内は客が少ないのに、なぜ成長を続けられるのか。同社の“非常識経営”に迫る。
(4): 子どもの数が減っているから市場はなくなるのウソ
西松屋はターゲット顧客を「低価格でいいものであれば買ってくれるはずだ」と捉えて経営をしているのだと思います。
子育てにはお金がかかります。しかし、子育て家庭の可処分所得は下がり続けています。今の時代に子どもを育てるのはなかなか難しいことです。一番の負担である「子育てにかかる費用の低減」に貢献できれば、ターゲットの支持を得られるはずです。
日本には年間で86万人(19年度)の出生数があります。14歳までを同社がターゲットとする市場としても、約1500万人の子ども市場があります。
西松屋は10万人の商圏には原則1店舗出すと決めています。
子ども服のマーケットサイズ(年間1人当たり消費支出金額)は約7000円。玩具や消耗品、靴などの周辺商品を含めると西松屋が取り扱う商品のマーケットサイズは1万円程度になります。
では、西松屋の商圏内シェアを算出してみます。
(1)商圏内総需要額=子ども関連マーケットサイズ×商圏人口=1万円×10万人=10億円
(2)西松屋の1店舗当たり売り上げ=1.42億円
(3)西松屋の商圏内シェア=(2)÷(1)=1.42億円÷10億円=14.2%
つまり、西松屋の1店舗当たりの売り上げは小さいのですが、たくさんの店舗を出店することによって、全国市場では15%のシェアを確保することが可能になるのです。
日本全国の10万人以上の商圏に1店舗ずつ出店すれば、子ども関連市場の15%のシェア(優位シェア)をとることが可能で、会社としても安定的な数字を確保できます。これがコロナ禍かつ縮小市場でももうかる企業のマーケティング戦略の論理です。
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