店内は客が少ないのに25年連続増収 西松屋がコロナ禍でも絶好調の理由:「アパレル」「子ども服」「小売業」は三重苦か(5/7 ページ)
コロナ禍でも業績好調の西松屋チェーン。店内は客が少ないのに、なぜ成長を続けられるのか。同社の“非常識経営”に迫る。
(3): 全ては「低価格で魅力的な商品開発のために」
同社のこうした努力は何のためにしているのか。それは、魅力的な商品開発のためと断言してもいいでしょう。
以前、ある雑誌のインタビューで大村氏はこう発言していました。
「毎日の子育てが楽しくなるような、『豊かなくらし』を実現したい。そのために私たちは、お客さまに満足していただける品質の商品をどこよりも低価格で、最も便利に提供していきたいと常に考えています」
同社が徹底的に店舗にかかるムダを省き、ロスをなくし、余分な経費を削っているのは、その分をより魅力的な商品開発につなげていきたいと考えているからです。
同社がターゲットとしている「子育て世帯」。彼らにとって一番の課題は何かを突き詰めた結果、子育て世帯の可処分所得が下がり続けていることに行き着いたのではないかと私は推測しています。これが西松屋の戦略の本質です。
ですから同社では「399円の半袖Tシャツ」「1万円以下のベビーカー開発」といった、いわゆるキュッキューのオリジナル商品(末尾が99円の低価格商品)をメーカーと共同で開発し、一定以上の粗利を確保して、低価格を実現させる商品開発に力を入れています。POSで売れ筋を徹底管理する新商品管理システム、取引先と作ってきた物流システム、そして他社を圧倒するこの商品開発力が同社を躍進させてきました。
西松屋の商品開発にかける努力はすさまじいものがあります。私のコンサルティング先が委託を受けて西松屋のある商品を作っています。西松屋の開発担当者(家電メーカー出身)は、品質に関して疑問を抱いたり、原価低減に向けて取り組む余地があると考えたりすると、海外の生産工場にまで一緒に出向き、その生産ラインを徹底的に研究し、ムダを省く提案をします。そして、西松屋の取る粗利を確保しつつ、最終的には業界最安値の商品価格を設定してしまうのです。
結果的に2000年には29.1%だった粗利率を、20年度には34.8%にまで高めたのです。
関連記事
- 気付けば日本に30店舗 コストコが女性から熱狂的に支持される理由
コストコが日本に進出してから21年。着実に店舗数を増やし続け、有料会員も600万人を超えた。特に女性客から圧倒的に支持される理由をビジネスモデルの観点から解説する。 - 僕らのヒーローだったジャッキー・チェンが、世界で嫌われまくっている理由
香港アクション映画の象徴的存在、ジャッキー・チェンのイメージダウンが止まらない。隠し子である「娘」の振る舞いや、自伝で語られた「ダメ人間」ぶりなどが欧米やアジアで話題になっている。私たちのヒーローだったジャッキーに何が起きているのか。 - ミニストップ「おにぎり100円」がもたらした“意外な変化”
ミニストップが7月に始めた「おにぎり100円」施策。主力商品のおにぎりを最大30円値下げした。開始から3カ月がたち、効果はどれほど出ているのか。また、“100円”という値決めは成功なのか。狙いや現状について聞くと、意外な変化も見えてきた。 - スーパーでよく聞く「ポポーポポポポ」 18年たっても愛される理由
スーパーの売り場などでよく聞く「ポポーポポポポ」という曲。それを流しているのは「呼び込み君」という小型の機器だ。2000年に発売され、18年目を迎える呼び込み君が使われ続けるのはなぜか。製造販売する群馬電機に聞いた。 - ワークマンの大ヒットは、「安いのに高機能でオシャレ」だからではない
ワークマンの勢いが止まらない。今年4月の国内店舗数はユニクロを超え、売上高も大幅に伸ばしているのだ。同社の成功要因として「激安なのに高機能でオシャレ」といった指摘が多いが、本当にそうなのか。筆者の窪田氏は違った見方をしていて……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.