「集まれない」に苦慮するブライダル業界 リゾート婚大手が見極める“追い風”とは:「近づけない、集めない」時代を生き抜く、企業の知恵(3/4 ページ)
リゾート挙式大手のワタベウェディングは、新型コロナの影響が大きい中、オンライン相談やライブ配信サービスなど需要への対応を急ぐ。一方、小規模化やオンライン化はリゾート挙式のスタイルに合う。新たな需要創出に向けて、ビジネスモデルの見直しも進める。
小規模化がリゾート挙式の“追い風”に
同社の意識調査では、感染拡大前と拡大後の意識を比べると、少人数で実施できる「国内リゾート挙式」を希望する人が増えていることも分かった。また、結婚式に「家族のみ招待したい」という回答も多くなっており、少人数での挙式を希望する人が増加傾向にある。
仲山氏は「リゾート挙式は少人数・開放的なスタイル。旅行や移動ができるようになれば、受け入れやすい形式だろう。少人数化の流れは、リゾート挙式にとっては“追い風”になるのでは」と語る。リゾート挙式自体は新しいものではないが、“密”の回避やリモート化など、新たな需要に対応しやすいことから、これまでとは違った観点で見直されていく可能性がありそうだ。
また、なかなか移動ができない中でも、リゾートへの関心は薄れていない。同社の子会社が運営するハワイ旅行の情報サイト「Hawaii Lovers」のインスタグラムのフォロワー数は、コロナ前の1万3000人から2万人以上に増えている。実際に行けない状況だからこそ、現地から発信される写真や情報を見て、雰囲気を感じたり癒やされたりしたいという人が増えていることが分かる。
とはいえ、実際に安心して旅行できるようになる見通しは立っていない。厳しい事業環境がしばらく続くことは避けられない状況だ。
リゾート挙式で成長してきたワタベウェディングにとって、これまでにも危機はあった。2001年の米同時多発テロだ。当時、海外挙式のキャンセルが相次いだ経験から、国内のホテルを傘下にするなど、さまざまな挙式スタイルに対応できるようにしてきた。それでも、今回の新型コロナの影響は大きいという。
「海外渡航ができるようになれば、需要は戻ってくる。そのときに価値あるサービスを提供するために、どう生き残るか」(仲山氏)。オンライン対応や国内サービスの強化に加えて、事業エリアや販売拠点の見直しなど、コスト抑制にも取り組む。
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