レヴォーグで提示されたスバルの未来:池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/5 ページ)
シャシー性能に注力したスバルの改革は、本当にスバルに相応しい戦略だ。すでに何度も書いてきているが、フラット4の余命はそう長くない。CAFE規制の今後を見れば、少数生産の特殊エンジンとして生き残ったとしても、いつまでも主力ではいられないだろう。その時「スバルの走りとは何か?」と問われたとして、このレヴォーグのSGPセカンドジェネレーションには十分な説得力があり、スバルがスバルでい続けられる理由が相当に明確になった。
この時、スバルの新世代プラットフォームであるSGPをさらに進化させて、シャシーの応答速度を上げる取り組みが発表されている。その発表を筆者は以下のように説明した。
「愉しさ」はといえば、こちらはSGPとAWDである。まずはSGPによって応答のレスポンスと正確性の引き上げを狙う。ドライバーの操作に対する車両の応答遅れは、スバルによる実測値で450ms、つまり0.45秒あるのだそうだが、このうち65%はステアリング—サスペンション—車体の経路で起きている。つまり、これらのルート上の全箇所の剛性を徹底的に高めることで、応答遅れを改善できる。さらに、さまざまなシチュエーションでの走破性を高めるために、より高度なAWD制御を行う。
平川氏の言う「インナーボディコン」は、今回正式に「フルインナーフレーム」と名付けられて登場した。この時、筆者はまだ明言を避けているが、SGPのセカンドジェネレーションは、すでにこの改革の核になるのではないかと予感していた。それが、筆者が「SUBARU技術ミーティング」の説明内容を好意的に受け止めた理由だし、そいう予備知識なしで説明会に参加したほかのジャーナリストたちからは、「あんまり中身がなかった」というブーイングが漏れ聞こえてきた。
確かに、詳細説明も実体験も伴わない状態でこれらの説明を聞いても「理屈は分かる」というだけになってしまう。ボディコンストラクチャーの作り方を刷新するという革新的計画を知らなければ「ボディ剛性を上げるとハンドリングが良くなります」というあまりにも当たり前の説明になってしまう。このあたりはスバルのコミュニケーション能力の欠如で、筆者に言わせれば、この時「フルインナーフレーム」を鳴り物入りで発表しておけば良かったのではないかと思う。
それでも頑なに未来の企業戦略や製品戦略を語ろうとしなかったスバルが、肝となるカードは伏せつつも、こうした未来のあり方の説明を始めたことは素晴らしいと筆者は思った。
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