大手銀行の送金手数料値下げは本質的か? Fintech協会理事に聞く(1/2 ページ)
三菱UFJ、三井住友、みずほ、そしてりそな銀行が、個人間の送金手数料を引き下げる検討に入ったと、8月頭に報じられた。新興のキャッシュレスサービス事業者などから、チャージにかかる手数料が高いとたびたび指摘されており、政府もこれを問題視してきていた。こうした動きについて、直接の影響があるキャッシュレスサービス事業者はどう見ているのか。
三菱UFJ、三井住友、みずほ、そしてりそな銀行が、個人間の送金手数料を引き下げる検討に入ったと、8月頭に報じられた。新興のキャッシュレスサービス事業者などから、チャージにかかる手数料が高いとたびたび指摘されており、政府もこれを問題視してきていた。
引き下げの時期や額は明らかになっていないが、銀行口座から直接お金を引き落とすJ-Debitの仕組みを使うものとされている。こうした動きについて、直接の影響があるキャッシュレスサービス事業者はどう見ているのか。
さまざまなフィンテック事業者が参加するFintech協会の理事である神田潤一氏に聞いた。神田氏は、マネーフォワードの執行役員も務めている。
――銀行が手数料引き下げに至った背景は?
神田氏 銀行間手数料の引き下げ報道が出ているが、もともとは春に公正取引委員会が出したレポートが今の動きにつながっている。公取のレポートから、政府の未来投資会議での議論や全銀ネットの決済インフラの抜本的な見直しに入り、直接的には銀行のインフラをどうするのか、対応することになった。
(銀行間の送金を行う)全銀ネットの、次世代のありかたを検討するタスクフォースが6月に立ち上がっている。関係者が3回会合を重ねており、そこで続けて議論をしていく。当面の大事なアクションだ。
一方、これらであまりに抜本的な変革が出てしまうと、銀行としては対応がたいへんだ。(今回の手数料引き下げの動きは)既存のインフラを活用して銀行が主導権を握れる対応をできないか、ということで、できることを打ち出してアピールする面があるのではないか。
取り組み自体は、銀行間の決済手数料の引き下げにつながり、スピーディーで評価できる面はある。ただしどのくらい下がるのか、どのくらいのスケジュールで進めていくのか、参加していく銀行やフィンテック事業者への広がりが見えてこない。
――手数料はどのくらい問題だったのか?
神田氏 公正取引委員会の2つのレポートで共通している指摘は、1件いくらで手数料がかかってしまうと、取引が進まなくなってしまうということだ。ネットの時代は情報が流通していく中で付加価値が生まれていく。ここがスムーズにいかないと、商品やビジネスのやりとりが滞る。
少額で高頻度の決済をしたり、お金が動く中で付加価値を生んでいったりという時代に対して、1件いくらは妨げになる。いまの時代のユーザーのニーズ、全世界のスタンダードからは遅れている。
関連記事
- 公取も動いた銀行APIの今後 神田潤一氏に聞く
いったんの節目を迎えた銀行オープンAPI。しかし4月に公正取引委員会は「取引上の地位が優越する銀行が、契約の見直しを行い、電子決済等代行事業者に正常な商慣行に照らして不当に不利益を与える場合には、独占禁止法上問題となるおそれ」というレポートを発表した。銀行APIの今後はどうなるのか? - 「銀行API開放は、21世紀のATMである」 目処ついた参照系、不透明な更新系
「銀行APIは21世紀のATMである」といわれる銀行API。「6月まで」と政府がKPIを掲げた参照系APIは、ほぼ目処がついてきた。一方で、フィンテックの基盤として期待される更新系APIについては、温度差も大きく、不透明な状況だ。 - 政府の”キャッシュレス推進”ウラの狙い 改善したい“不名誉すぎる”実態とは?
消費税増税からまもなく1カ月を迎え、キャッシュレスへの関心の高まりが顕在化してきた。政府が”身銭を切って”までキャッシュレス決済を推進するのは、異例とも思われる措置だ。その背景を理解するには、巷(ちまた)で言及されているような「インバウンド需要」や「脱税防止」以外にも押さえておかなければならない重要なポイントがある。それは、アンチ・マネーロンダリングだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.