レシピ競争から脱却! 味の素が「体験」「共感」を発信する意味:アフターコロナ 仕事はこう変わる(2/3 ページ)
コロナ禍で“家での体験”が見直される中、味の素は7月に情報サイト「味の素パーク」をリニューアル。レシピページの閲覧は増えていたが、“食の体験”を打ち出すサイトに変えた。その背景には、ブランドへの共感を生むことに加え、デジタル活用で潜在ニーズを探る狙いがある。
レシピの前に「人」を見せる
リニューアルした味の素パークでも、レシピ情報は豊富に掲載しているが、より強化しているのが「人」を感じさせることだという。商品開発の裏側や料理にまつわる知恵などを積極的に見せるために、普段は表に出ることのない味の素の社員や、外部の料理研究家らに語ってもらっている。
その一つが「味の素社員のご飯ルール」という、「食べることが大好きな味の素社員のご飯に関する工夫や決まりごとをシリーズで取り上げる」という企画だ。自分や家族の食事を毎日用意する苦労や楽しさを率直に語ってもらうことで、特にメインターゲットの主婦層に共感してもらうことが狙いだという。
また、「おいしさの相性を科学する」という企画では、普段はあまり消費者に見せる機会がない、同社の“研究”に焦点を当てている。研究の一端を気軽に体感してもらうため、身近なテーマである「お酒と料理の相性」を取り上げた。これまでに「レモンサワー編」「ビール編」「ハイボール編」を公開。同社食品研究所の研究員にインタビューし、それぞれのお酒の特徴や料理との組み合わせによる味や香りへの効果を解説している。
「レモンサワーに合う料理のレシピ」だけであれば、味の素パークでなくても情報は手に入る。味の素パークでも最後はレシピを紹介しているが、その過程で“人”の顔を見せることで、同社の研究を知り、印象に残してもらうことを狙っている。松本氏は「『このお酒に合うレシピはこれです』と見せるだけではなく、その背景にはこんな人のこんな研究がある、それでこの味が合う、といった見せ方をしている」と説明する。
社員だけでなく、外部の料理研究家なども積極的に取り上げる。味の素の商品を使ったユニークなアレンジレシピを紹介してもらう「味の素社の知らない世界」という企画や、調理とトークの様子を見せるライブ配信イベントの実施など、今後もさまざまな“人”が登場するコンテンツを増やしていく方針だ。
一方、味の素パークは食の体験によって消費者に楽しんでもらうだけのメディアではない。全社で進めるデジタルトランスフォーメーションの一端を担う期待を背負っている。
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