カゴメが築く「ファンを夢中にさせる」戦略 わずか2.5%のユーザーに注目したワケ:新商品開発にも効果(1/4 ページ)
「野菜生活」などで知られるカゴメは、2015年に会員制コミュニティーサイト「&KAGOME」を開設。その背景には「少数のヘビーユーザーが売り上げを支えている」という特徴的な売り上げ構造がある。ファンとつながる取り組みによって、会社や事業に及ぼした影響とは?
「お客さまの声を聞け!」「顧客接点を大事にしろ!」――そんな指示が毎日のように飛び交っている企業は多いのではないだろうか。自社の商品やサービスによってどのように喜んでもらえるか、探っていくことは昔も今も変わらず課題になっている。
自社商品のファンとの“つながり”を深める取り組みを行い、その効果を会社全体に波及させることに成功したのが、食品メーカーのカゴメだ。同社は2015年に会員制のコミュニティーサイト「&KAGOME(アンドカゴメ)」を立ち上げた。現在は約3万1000人の会員がいる。
「&KAGOME」は単なる宣伝や情報発信のサイトではない。「能動的にお客さまとつながるために開設した」と、同社広告部 宣伝グループ課長の水野慎也氏は話す。その背景には、カゴメの特徴的な「売り上げ構造」があった。
2.5%のヘビーユーザーが全体の30%を購入
「カゴメの商品は、わずか2.5%のお客さまによる購入が、売り上げの30%を占めている。少数のヘビーユーザーの方に支えられている構造なのです」(水野氏)
この特徴が分かったのは14年。当時、カゴメのビジネスには懸念材料があった。主力ブランドの「野菜生活」を中心とした野菜飲料の売り上げが伸び悩んでいたのだ。その理由を探るために市場の分析をしたところ、特徴的な構造に行き着いた。
「ヘビーユーザーの離脱が伸び悩みの原因。売り上げ規模を支えてくれるユーザーの方に目を向けることが課題だと分かった」と水野氏は振り返る。キャンペーンなどを展開しても、すぐに忘れられてしまっては意味がない。ファンを増やし、継続的につながり続ける取り組みが必要だった。
こうして15年4月に立ち上げたのが「&KAGOME」。「ファンを知る」「ファンに伝える」「ファンと一緒に体験する」の3つが大きな目的だ。
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