2年目も売れ続ける「本麒麟」 ロングヒットの鍵を握る“2つの数字”とは:初年度の1.7倍(1/3 ページ)
キリンビール「本麒麟」が2年目も売れ続けている。多くの失敗を経て“味”を追求したことが奏功。初年度の7割増で推移している。第3のビールの競争が激化する中でヒットした理由と今後の成長の鍵は? そこには、同社が重視する“2つの数字”がある。
キリンビールが2018年3月に発売した「本麒麟」が売れ続けている。1年前、18年のヒット商品として取り沙汰されたことも記憶に新しいが、2年目となる19年は前年の7割増の実績をたたき出しているのだ(1〜9月)。さらに、消費税率の引き上げがあった10月の販売も、前年を1割上回った。
なぜここまでヒットしているのか。その背景には、同社が重視する2つの“数字”があった。ビール系飲料では、低価格の新ジャンル商品(第3のビール)の市場が広がり、競争も激化している。そんな中、本麒麟が幅広い層に支持されている理由について、同社に聞いた。
12種類もの新商品が失敗
「本麒麟は『本気の覚悟』を持って開発した商品」と、マーケティング部ビールカテゴリー戦略担当の中村早織氏は振り返る。本麒麟の開発当時、キリンの新ジャンル商品は、多くの課題を抱えていた。
キリンの新ジャンルといえば「のどごし<生>」。05年に発売し、圧倒的なブランド力を築いて市場を広げてきた。しかし、それだけに頼っていては頭打ちになる。実際、17年の同社の販売数量では、新ジャンルが6%減少していた。
もちろん、それまでに新商品を出さなかったわけではない。本麒麟までに、12ブランドもの新ジャンルの新商品を発売してきた。しかし、どれも定着しなかった。のどごしや他の競合ブランドと差別化できる商品にはならなかったのだ。だからこそ、本麒麟には“失敗できない”という思いが詰まっているという。
具体的にいうと、本麒麟の中味には、キリンのビール類における成功や失敗の知見を反映させている。ビールで培ったホップなどの原材料や製法、アルコール度数の組み合わせといった知見を洗い出し、一つずつ試していった。「過去をひもときながら、これまでの商品よりもたくさん試作をした」と中村氏は話す。
中味の開発に徹底的にこだわった理由は、新ジャンルに対する世間のイメージを変えたいと思ったからだ。「本当は毎日ビールを飲みたいけど、新ジャンルで妥協する。その商品に心から満足しているわけではない。そう思われてしまうのはビールメーカーとして悔しい。『うまいものを飲みたい』というニーズを満たすのが使命だと思う」(中村氏)
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