サッポロ第三のビール「LEVEL9」、謎のレベル設定で売れた深い訳 :名は体を表す(1/2 ページ)
サッポロビールの高アル系第三のビール「LEVEL9」が好調だ。このジャンルで最高のアルコール度数「9」の数字をプロモーションで強調したほか、ターゲットである中年男性がゲーム世代のためRPGで出てくる「レベル」を商品名に入れた。
サッポロビールが6月に発売した「第三のビール」(いわゆる「新ジャンル」)、「サッポロ LEVEL9贅沢ストロング」が好調だ。同社によると、年間販売計画である1600万本(633ミリリットル入り大瓶に換算)のうち、30%を発売後4日間で売り上げた。第三のビールの中でもアルコール度数を最も高い9%まで高め、強めの飲みごたえが消費者に受けたとみられる。
コストパフォーマンスの良さから人気となっている、高アルコールの第三のビール市場。度数が8%のサントリービールの「頂(いただき)」、7%のキリンビール「のどごしSTRONG」などビール各社が2017年からしのぎを削っている。7月にはアサヒビールも度数7%の「クリアセブン」を発売した。
このジャンルでは最高のアルコール度数が売りのLEVEL9。しかし他社も味わいや販促に工夫を凝らす中、単純な品質だけでは訴求しきれない。それでもサッポロビールがこの商品をうまく消費者に売り込んでいる背景には、どうやらこの「LEVEL9」というネーミングの妙があるようだ。そもそも9は分かるが、なぜ「レベル」なのか。
同社でこの商品のマーケティングを担当するブランド戦略部、齋藤愛子さんは「LEVEL9という商品名にはコンセプトのすべてを詰め込んだ」と言い切る。ネーミングの真意を聞いた。
とにかく「9」推しでプロモーション
第三のビールで最高のアルコール度数を目標に開発されたLEVEL9。齋藤さんによると9%という設定にした理由は意外と単純。10%を超えると酒税法上で別ジャンルのお酒と見なされ、税率が大幅に上がるからだ。そこで「第三のビールの限界の度数」として9%にすることが決まった。
齋藤さんによると第三のビールは製造する際、度数を上げるとどうしても甘くて重い味になる傾向がある。そこで甘みの発生源とされる麦芽の味わいを抑えめにするため大麦の比率を高め、ホップを添加するタイミングも2回に分けるなど工夫。高いアルコール度数と“ビールっぽいキレ”を両立させたという。
こうして開発に成功し、商品名にも一番の売りである「9」を戴いたLEVEL9。「プロモーションでも『9』をキーワードに仕掛け続けた」(齋藤さん)。
例えばWebで展開する動画広告。「ナーイン!」「シージョウハツ、キューパーセントノシンジャンル」。たった6秒、奇抜な格好の外国人タレントがカタコトで商品を持ちながらこのせりふを言うだけ。齋藤さんは「(外国人タレントに)とにかく『9』を叫んでもらうことで、思わず見てしまってクスッと笑えるようにした」と説明する。
店頭のPOP(店頭販促物)でも9押しを貫く。切りのいい「売り上げ1000万本突破」といったよくあるタイミングでなく、6月末には「おかげさまで999万本突破」と題したPOPを販売店に配った。商品の画像と相まって「9」まみれ。今やプロモーションを担当する取引先からも9にまつわる提案が殺到するようになった。
関連記事
- 映画館やブックカフェにも キリンのクラフトビール戦略が好調
キリンビールが提案するクラフトビール用サーバ「タップ・マルシェ」が好調だ。2017年に首都圏の1000店舗以上に導入。3月に全国展開を開始し、すでに全国2500店舗に広がった。自由に楽しめるクラフトビールの成長によって市場活性化を目指す。 - “透明ビール”を飲んでみた 8年越しの開発、アサヒ「クリアクラフト」
アサヒビールがテスト販売を開始した透明な発泡酒「クリアクラフト」。7月下旬から2回目のテスト販売を実施する。技術的なハードルを越え、8年越しで開発された「透明ビール」を飲んでみた。 - 「東京も海外も同じ」 ベアレンのビールが岩手に密着する理由
2001年、盛岡市で創業したクラフトビールメーカーのベアレン醸造所。同社は地域密着を掲げ、地元の人たちに愛されるビール造りを心掛けている。なぜそのことに徹底的にこだわるのか。創業メンバーの1人である専務の嶌田洋一さんに聞いた。 - ノンアルコール飲料、飲食店で「置いて当たり前」の時代に
飲食店のうち8割がノンアルコール飲料を提供しているという調査結果が出た。中には飲み放題メニューに入れるなど提供方法も工夫している店もあるほどで、居酒屋に行った時の「まずはビール」は古くなりつつあるのかもしれない。 - キリン、スコッチウイスキー「ホワイトホース」のハイボール発売
キリンビールがスコッチウイスキー「ホワイトホース」を使ったハイボールを発売する。スコッチのスモーキーな香りに着目し他のウイスキーは混ぜずに仕上げた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.