2年目も売れ続ける「本麒麟」 ロングヒットの鍵を握る“2つの数字”とは:初年度の1.7倍(2/3 ページ)
キリンビール「本麒麟」が2年目も売れ続けている。多くの失敗を経て“味”を追求したことが奏功。初年度の7割増で推移している。第3のビールの競争が激化する中でヒットした理由と今後の成長の鍵は? そこには、同社が重視する“2つの数字”がある。
売り場で“赤の塊”をつくる
そういった経緯があり、社名まで背負うことになった「本麒麟」は、発売すると想定以上の売り上げを記録。18年の年間販売目標は2回も上方修正し、最終的には約4億790万本(350ミリリットル缶換算)を販売した。4億本突破は、過去10年のキリンビール新商品の中で最速だった。
19年1月には早くもリニューアルを実施。1年目の手応えから、「もっとうまいものができる。現状にとどまろうとしてはいけない」と考えたからだ。特徴である「コク」「キレ」をより感じられるように、中味やパッケージの調整を行った。
19年の年間販売目標は、前年比7割増の1580万ケース(大びん換算)に上方修正している。増税直前の9月は、前年同月比9割増。増税後の10月も、新ジャンル全体では11%減(同社推計)と落ち込んだが、本麒麟は13%伸びるほどの好調ぶりだった。
中村氏によると、2年目の好調の理由は3つ。「プロダクト」「広告・PR」「販促」だ。その中でも販促については、スーパーなどの売り場で「“赤”の塊をつくり、本麒麟らしい世界観を打ち出す」(中村氏)施策を実施。販促物などを利用し、本麒麟のパッケージカラーである赤色を大きく打ち出した。来店客の目を引くように調整したという。
また、販促物は「ディテールを妥協しない」(中村氏)。キャンペーンの景品であるグラスの形まで、細かい部分で調整を重ねたという。中村氏は、「店頭は大事。お客さまに買っていただけるかが決まる場所」と話す。
売り場では変化も起きている。新ジャンルである本麒麟と一緒に、「アサヒ スーパードライ」「キリン 一番搾り」などのビールを購入する人が増えているのだ。通常は、ビール、新ジャンルといったカテゴリーの中で複数のブランドの商品を一緒に買う傾向が強いという。しかし、本麒麟はビールと一緒に購入される方が多い。「“うまいもの”として選んでもらえているのでは。ビール類のヒエラルキーを壊すことができた」(中村氏)
そして、今後のさらなる成長のために、中村氏らが注目している数字がある。本麒麟が定番商品として売り場に残り続けるか、鍵になる指標だ。
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