レシピ競争から脱却! 味の素が「体験」「共感」を発信する意味:アフターコロナ 仕事はこう変わる(1/3 ページ)
コロナ禍で“家での体験”が見直される中、味の素は7月に情報サイト「味の素パーク」をリニューアル。レシピページの閲覧は増えていたが、“食の体験”を打ち出すサイトに変えた。その背景には、ブランドへの共感を生むことに加え、デジタル活用で潜在ニーズを探る狙いがある。
アフターコロナ 仕事はこう変わる:
新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえ、業務の進め方を見直す企業が増えている。営業、在宅勤務、出張の是非、新たなITツール活用――先進的な取り組みや試行錯誤をしている企業の事例から、仕事のミライを考えていく。
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在宅時間が長くなったことで、家で食事をする機会も増えたという人は多いだろう。普段よりも手の込んだ料理をしたり、子どもと一緒にお菓子を作ったり、お取り寄せグルメを試してみたりと、在宅でも幅広い楽しみ方がある。一方、家族の在宅時間が増えたことで、食事の準備などの負担が重くなったという意見も聞かれる。
“食”に関する情報がより求められている中、味の素は7月に食の情報サイト「AJINOMOTO PARK(味の素パーク)」をリニューアル。新型コロナウイルス感染拡大後、レシピページのアクセスは伸びていた。しかしリニューアルでは、レシピだけを前面に出すことをやめて、“食の体験”ができるサイトとして生まれ変わらせた。
レシピ中心のサイトであれば、食材などのキーワードで検索されやすい上に、コロナ禍での追い風もある。それでも刷新したのはなぜか。その背景には、同社の“中核メディア”として、単なる情報発信にとどまらない活用を目指す狙いがある。
4月のアクセスは2.5倍! それでも刷新した理由
今春、新型コロナの感染拡大につれて「家での過ごし方」が注目された。料理のレシピを調べる人も増え、味の素パークのアクセス数は3月に前年同月比1.7倍、4月は2.5倍と飛躍的に伸びた。それ以前も人気だった「時短」「簡単」というキーワードに関連するレシピだけでなく、子どもと一緒に作るレシピや手の込んだレシピ、ホットプレートを使ったレシピなどの閲覧も増えた。
サイトのリニューアルはコロナ禍の前から準備しており、7月に予定通り実施した。食品事業本部 調味料事業部 オウンドメディアグループの松本大樹氏は、リニューアルの理由を「レシピサイトは、食品メーカーが戦う土壌ではなくなった」と説明する。
投稿型のクックパッドをはじめ、クラシルなどの動画サービス、調味料メーカーが運営するレシピサイトなど、趣向を凝らしたレシピサイトがどんどん増えている。その中で選ばれるには専門の技術やノウハウが必要だ。また、検索によって数あるサイトから選んでもらえたとしても、レシピを調べるだけで離脱してしまうことも多く、ブランドの認知にはつながらない。
そういった課題意識から、「自社商品を使ったレシピだけでなく、料理を作ることはもちろん、食材について知ったり、食べ方を工夫したり、家族で食について会話したりできる“食の体験”を届ける」(松本氏)ことが、味の素パークでやるべきことだと判断した。食を含めて“家での体験”が見直されたタイミングとリニューアルが重なり、より「消費者と密に関わって関係性を深める」ことの意味合いが強まった。
では、食の体験を提供するコンテンツとはどのようなものなのか。それは、消費者に共感してもらうための見せ方として表れている。
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