「脱・総菜」がカギ コロナ禍で好調の食品スーパー、乗り越えるべき50年来の“タブー”とは?:小売・流通アナリストの視点(3/4 ページ)
巣ごもり需要で軒並み好調の食品スーパーだが、今後は「脱・総菜」の取り組みがカギを握りそうだ。そのために必要なものとして、小売・流通アナリストの中井氏は50年来親しまれている食品スーパーのある売り方を挙げる。
日本の消費者は、鮮度に対するこだわりが極めて高く、センターで加工して運んで1日、半日遅れで陳列された商品を見抜き、鮮度がよくないと判定し、その店は選択肢から外されてしまうのである。こうした事例の蓄積もあり、業界では生鮮加工センター(プロセスセンター)に移行することは、ある意味、タブー視されてきたといっていい。
ただし、近年では消費環境の厳しさや、業界再編の進行による競争環境の激化といった事情もあり、先進的な取り組みとして、鮮度を保ちつつ、加工工程を細分化するなどして、段階的なセンター化にチャレンジする企業も出始めてきた。かつてとは異なり、ITや冷蔵、パッキング技術などが大幅に進化している現在では、技術的には既に鮮度維持は可能になっており、あとはやり方次第、というところまで来ているという。業界内を見てみると、こうした手法に積極的にチャレンジしている企業は徐々に増えてきており、そういったチャレンジングな企業ほど、今後の生き残りの可能性を感じられるのも事実である。
そうした中、コロナ禍の襲来は、厳しい消費環境や競争激化に悩む食品スーパー業界にとって、言い方は悪いが、売上的には神風のような効果をもたらすことになった。仮に何も努力をしなかったとしても、外食やコンビニの需要が流れてくるのである。
来客が多くなれば、3密対策は大変だし、従業員の感染防止、安全対策、といった点でも、企業として悩みは多いながらも、増収は何にも代えがたいありがたい話であろう。しかし、この神風はウィズ・コロナの終息とともに終わるはずでもある。この時期に、ただ多くの来店客をさばくことに汲々(きゅうきゅう)として、そこそこもうかった、などと考えている企業があったとしたら、その将来はかなり暗い。中長期的戦略を持った企業は、この生鮮需給の大きな変動を加工工程のセンター移行によって克服しようとチャレンジするからである。
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