「脱・総菜」がカギ コロナ禍で好調の食品スーパー、乗り越えるべき50年来の“タブー”とは?:小売・流通アナリストの視点(4/4 ページ)
巣ごもり需要で軒並み好調の食品スーパーだが、今後は「脱・総菜」の取り組みがカギを握りそうだ。そのために必要なものとして、小売・流通アナリストの中井氏は50年来親しまれている食品スーパーのある売り方を挙げる。
プロセスセンターの導入は進むか?
コロナ禍の第1波においては、店舗ごとに大きく変動する需要に対応するのは、単独店舗での加工工程だけでは難しかったはずだ。
変動する店舗別の需給を把握・予測し、全体最適な加工量の管理や店舗間調整などが、本来は必要なのであろうが、こうした全体的な制御は、販売動向を把握して予測するITインフラ、即時に店舗に届ける最適な物流インフラ、コストを抑えて均一品質で加工可能なプロセスセンター――といったものが揃わなければ、困難である。こうした状況を踏まえ、先進的な企業はひそかに、コロナ襲来からウィズコロナに適合した新たなセンター化投資をおこなうはずだ。それは、来るべき、アフターコロナの時期に、コロナの追い風がなくなった売上水準(しかも、相応の減収を覚悟すべきだろう)に耐えられる収益体質を構築しようとするためである。
下の図表は全国スーパーマーケット協会の統計調査による、スーパーのプロセスセンター保有率の推移である。徐々に導入は進んではきたが、いずれかの部門でという導入で半分以下であり、本格的に活用しているという状況ではない。このコロナ禍を契機として、労働集約的な体制からの脱却を行うか、ゆでガエルと化すか、食品スーパーは大きな岐路に立たされているといっていいだろう。
コロナ禍によって、労働環境が急速に悪化しているため、人手不足に悩んでいたスーパーの業界も少しだけ息をついているかもしれないが、ウィズコロナが終われば再び、構造的な労働力不足に直面することは避けられない。インストア加工を前提とした労働集約的な古き良き日本型スーパーは、そう簡単には続けることはできないのだ。多分、そんなことを業界関係者は心では分かっているのだろうが、実際に一歩踏み出すのは極めて難しい。ただ、コロナ禍が生みだした神風は、終息後に一転して逆風になることを踏まえれば、今こそ長期的投資の方向性を検討すべき時期なのではないだろうか。
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