伊藤忠のファミマTOB成立、王者セブンに勝つ術はあるか:“いま”が分かるビジネス塾(1/3 ページ)
伊藤忠のファミマTOBが成立。コンビニと商社の一体化がますます加速。別路線を取る王者セブンに勝つ術はあるか。
伊藤忠商事がファミリーマートに対して実施した株式公開買い付け(TOB)が成立した。伊藤忠はファミマの完全子会社化と上場廃止に向けて手続きを進めることになる。
今回のTOBでファミマは伊藤忠の100%子会社にさらに近づき、ローソンも三菱商事との一体化が進んでいる。大手3社の中でセブン-イレブンだけが商社との明確な資本関係を持っていないが、競合2社の動きに対してセブンはどう対応するのだろうか。
コンビニと商社、一体化
伊藤忠は1998年、西友から株式を取得してファミマをグループ会社化し、2018年にはTOBを実施して連結子会社化するなどファミマへの関与を強めてきた。ファミマの社長を務める澤田貴司氏はプロ経営者として同社の舵(かじ)取りを行っているが、もともとは伊藤忠出身である。
三菱商事は01年にダイエーからローソン株の譲渡を受けて同社の筆頭株主になった。その後、17年にローソンに対するTOBを完了し子会社化した。三菱商事の子会社になったことに加え、ローソンのトップは基本的に三菱商事から派遣されているので、市場ではローソンと三菱商事は一体の関係と見なされている。
コンビニ大手3社のうち2社は総合商社の一部門ということになるわけだが、全く異なる路線を歩んでいるのが、業界トップのセブン-イレブンである。セブン-イレブンを運営するセブン&アイ・ホールディングスは三井物産との資本関係はあるが、三井物産が影響力を行使できる状況ではなく、商社とは中立のスタンスを貫いている。
意外に思うかもしれないが、もともとセブン&アイ・ホールディングスは伊藤忠との関係が強かった。その理由は、セブンが日本で初めてコンビニ事業を立ち上げるにあたり伊藤忠が全面的に支援したからである。だが、伊藤忠がファミマへの関与を強めたことからセブン側が反発し、その後は一定の距離を置く関係になった。
競合2社の商社との一体化路線に対するセブン側の戦略は、おそらく「何もしない」ということになるだろう。その理由は、小売店にとっての生命線の1つである「商品の自由度」を下げたくないからである。
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