S&P495で分かる ブーム化する「米国株投資」に隠れた”歪み”:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(2/2 ページ)
SNSにおける米国株ファンの発信や、初心者向けの米国株投資本の出現などによって、日本の個人投資家にとっても、米国株投資が近年一層身近な投資体験となっている。しかし、S&P495とS&P500、そしてGAFAMを比較すると、「米国株がコロナからいち早く立ち直った」という触れ込みの”ウソ部分”が分かる。
コロナから「米国株がいち早く立ち直った」のウソ
S&P495とS&P500、そしてGAFAMを比較すると、「米国株がコロナからいち早く立ち直った」という触れ込みの”ウソ部分”が分かる。
確かにS&P500指数は、8月18日時点で3389.78ドルをつけ、これまでの史上最高値を更新する動きを見せた。足元では上昇にいったんの落ち着きを見せているが、他国の指数と比較しても強い値動きが見てとられる。しかし、これもGAFAMによる株価上昇にけん引されている部分が色濃く出ている。
ゴールドマンサックスによれば、S&P500指数が初めて年初来のパフォーマンスでプラスとなったのは、6月のことであるという。しかし、S&P495がプラス圏に返り咲いたのはつい先日、9月に入ってからのことだ。
わずか5銘柄のパフォーマンスが含まれるか含まれないかによって、指数がプラスになるまで3カ月ものラグが発生している。パフォーマンスで比較しても、S&P500が年初来で+11%となる中、S&P495は未だ+1%程度だ。S&P500がいかにGAFAMの影響を受けているかが分かったのではないだろうか。
株価指数の限界
株価上昇局面において、GAFAMの株価上昇はS&P500全体を引っ張る心強い要因となるが、株価下落局面ではちょうどその反対のことが起きるリスクがある。
現時点で、S&P500の時価総額シェアは2割程度がGAFAMによって占められている。この偏りは、1990-2000年代に巻き起こったドットコムバブルの約18%を上回る水準となっている。
指数における個別銘柄が存在感を強める事例として有名な銘柄といえば、「日経平均株価指数とファーストリテイリング」が典型的な事例だった。日経平均株価指数は、「株価平均型」の指数であり、株価が高い銘柄(値がさ株)が指数へ大きく影響する。
ファーストリテイリングは、日経平均株価採用銘柄の中で随一の値がさ株であり、株価は2位の東京エレクトロン (約2万6000円)を大きく引き離す6万6500円程度で推移している。その結果、時価総額ではトヨタ自動車の約3分の1に過ぎないファーストリテイリングが、こと日経平均株価においては、トヨタの10倍近い影響力を持つ。この点で時価総額と指数への影響のバランスが取れていないというデメリットが目立っていた。
その弊害を克服するために、近年では時価総額の大きさで指数へのインパクトを調整する「時価総額加重平均型指数」が主流となっている。TOPIXやS&P500はこのタイプの指数で、時価総額と指数への影響のバランスを比例させることができる。しかし、今回のS&P500の事例では、「時価総額加重平均型指数の限界」も見え隠れするのではないだろうか。
GAFAMのように、時価総額シェアの大きい銘柄群が指数の先行きを左右することになれば、それ以外の構成銘柄がたとえ不調であろうと、指数だけは上がり続けることにもなりかねない。これでは、実態とかけ離れた指数動向となる可能性がある。
そこで、今後は「S&P495」のように、指数に大きな影響を与えるスター銘柄とそれ以外の銘柄群を切り分けるといった処理を行うことで、実態的な米国株の動向も確認することが有効となってくるだろう。
筆者プロフィール:古田拓也 オコスモ代表/1級FP技能士
中央大学法学部卒業後、Finatextに入社し、グループ証券会社スマートプラスの設立やアプリケーションの企画開発を行った。現在はFinatextのサービスディレクターとして勤務し、法人向けのサービス企画を行う傍ら、オコスモの代表としてメディア記事の執筆・監修を手掛けている。
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