ドコモ口座事件、真の原因は「認識の甘さ」ではない 露呈した「銀行との風通しの悪さ」:本田雅一の時事想々(3/3 ページ)
「ドコモ口座」の不正出金について、問題の根っこにあるのは「責任の所在が曖昧なこと」だという。筆者が指摘する、ドコモと銀行との「風通しの悪さ」とは?
誰もが見えるはずの景色が見えていない
ドコモ口座と連携し、銀行口座から入金するための仕組み、手続きの手順は銀行側に依存している。
「ドコモ口座というプリペイドサービスにお金を入れたいのだけど?」という時、どのような手法でお金を送金可能とするかの判断は銀行側にある。ドコモは、所定の手続きに従って情報を送り、その結果、入金されたから取引を承認しただけなのだから、本来は責任がない。
と、そんなふうに考えているかどうかは分からないが、この金融機関との距離感が、誰もが見えるはずの景色を見えなくしていた、あるいは「見ようとしなかった」(面倒くさいし、速やかに利便性の高い、簡便なサービスにしたいから)のではないか。
繰り返すが、ドコモ口座の本人確認のずさんさは責められて当然。本当にもう勘弁してくださいよ、と言いたくなるような”ポカ”であり、罪深い。
だが最も残念なのは、これほど明確な“穴”を見過ごし、しかも一度は発覚していたのに風通し悪く、見通せる景色を共有できなかったことだ。まさに木を見て森を見ず。大企業にありがちな、見えにくいものは見ない方が面倒が少ない──そんな前時代的な問題が透けて見えるならば、大きな問題はまだまだ隠れていることになる。
ドコモが巨大企業であることは言うまでもないが、メガバンクとは比較にならないとはいえ、地方銀行も大きな組織に違いない。まさか2020年にもなって「今さら大企業病かよ!」とあきれることになるとは。ドコモでさえ、この調子ならば日本全国、至るところに構造不良が隠れていても不思議じゃない。
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