人事を「採用業務」から解放する? 一石二鳥のリファラル採用、成功のカギ:「コネ採用」との違いは?(1/3 ページ)
人事業務の大きな負担である「採用」業務。効率化するには、リファラル採用も一つの手だ。コネ採用と混同されがちだが、違いはどこにあるのか。そして、成功のカギは? リファラル採用サービスを提供するMyReferの鈴木貴史社長が解説する。
コロナ禍において採用人数を縮小する企業が多い中、業務負担の多くを採用業務が占めていた人事の役割は変化しています。採用を減らしても業績は維持・向上しなければならないため、企業はこれまで以上に社員ひとりひとりの生産性やエンゲージメントを高めていく必要があります。
今、人事に求められているのは、直近の「採用業務」だけではなく、中長期的な経営の視点を持ち、社員のエンゲージメントを高めて「働きたい企業」を作ることではないでしょうか。そこで、本稿ではHRテクノロジーを活用して、採用業務の効率化とエンゲージメント向上の両方を実現するリファラル採用についてご紹介します。
採用業務に振り回されてきた人事
新卒一括採用、終身雇用、年功序列を前提とした職能型人事制度など、わが国の組織人事の位置付けはガラパゴスな進化を遂げてきました。人事部はコストセンターとして間接部門に位置付けられることが多く、企業によっては管理部や総務部内にあることも珍しくありません。そんな中、採用を自社で戦略的に行うのではなく、人材紹介サービスを使い外部に依存して行うのが当たり前になっていました。
また、人手不足や売り手市場の状況が続いた中で人事は常に採用業務に追われてもきました。例えば、多くの人事担当者は「6月までに10人採用する」「今年度は50人を採用する」という採用目標があり、そのために母集団を集めて、面談・面接を繰り返しています。そのような状況下では、人を採用することだけが目的になってしまい、「事業を伸ばすためにどのような人材を採用するべきか」「どのような採用手法をとるべきか」「どうやって社員のエンゲージメントを高めていくか」という本質的な議論にまでなかなか及びません。
一方で、2019年10月に当社が実施した調査では、多くの人事担当者が人事の役割は重みが増し、新しい採用手法の検討だけでなく、「会社の本質的な課題まで考えなければならない」という中長期的な課題認識を持っていると分かりました。
「紙とハンコ」は経理だけの問題じゃない
コロナ禍では、主にバックオフィス業務に携わる人たちの中から「ハンコのために出社したくない」という声も挙がり、話題になりました。経理や法務はもちろん、人事・労務領域でも紙とハンコを使う業務は山のようにあります。テクノロジーを活用してスマートに効率よく業務を進めている企業も増えてきていますが、まさにこの点に適応できている企業とできていない企業とで、大きな差が生まれたのではないでしょうか。
今や多くの会社がDXを推進していますが、「ハンコのための出社」にも象徴されるようにそう簡単には進みません。デジタル化で効率よく変わる側面もあれば、既存のやり方を変えたくないという意見も必ずあるためです。わが国のIT改革における意思決定でも同じように、企業民主主義的発想では改革が進まないのです。
私はトップの意思がなければ、変わらないと思います。「ハンコ文化を守りたい」「ITはよく分からない」という人もいるなかで、100%の合意を得るのは難しい。その前提で、生産性を向上させる方向へ舵を切る必要があるでしょう。組織全体での新しい取り組みは、経営陣そして人事が舵を切り、意思をもって変える方向へ推進していかなければなりません。
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