人事を「採用業務」から解放する? 一石二鳥のリファラル採用、成功のカギ:「コネ採用」との違いは?(3/3 ページ)
人事業務の大きな負担である「採用」業務。効率化するには、リファラル採用も一つの手だ。コネ採用と混同されがちだが、違いはどこにあるのか。そして、成功のカギは? リファラル採用サービスを提供するMyReferの鈴木貴史社長が解説する。
コネ採用は社長や経営幹部による裏口入社的なもの。一方、リファラル採用は戦略的に社員の人脈を活用して透明性をもって採用する手法です。当社では、リファラル採用をいくつかの段階に分け、「リファラル採用1.0」を従来のコネ採用、「リファラル採用2.0」をインセンティブ制度だけ作って社員に紹介してもらう採用、「リファラル採用3.0」を社員のエンゲージメントを高めながら自発的に紹介したい仕組みづくりから始まる採用だと定義しています。
インセンティブだけでは不十分
ご紹介したように、リファラル採用は採用効率の高い手法ですが、現場を巻き込むことから人事と社員双方に負担がかかります。先ほど「紙とハンコ」に関しても紹介しましたが、いざリファラル採用をしようとしても「友人に職場の紹介をして、決定すると店長にハンコを押してもらって申請し、さらにエリアマネジャーがハンコを押してFAXして……」という相当に手間のかかる手続きをしているケースもあります。現場や人事の負担が大きければ、入社した人へのフォローも不十分になってしまい、人材の定着率もなかなか上がりません。
また、リファラル採用としてよくある、紹介したら一時金などを支給するインセンティブの制度だけを作ったものでは、「リファラル採用2.0」の状態にとどまり、制度が形骸化し、失敗するケースもよく目にします。これでは、せっかくのリファラル採用のメリットを生かせず、社員と人事の負担だけが大きくなり、結果としてエンゲージメントが下がってしまう可能性もあります。
そのため、リファラル採用の場でもテクノロジーを活用して業務効率化を図り、本質的に社員のエンゲージメントを高めながら取り組む必要があります。昨今では多くのリファラル採用サービスが登場していますが、導入することで社員が紹介する手間や社内のフローが簡単になるだけではなく、採用活動を通じて人事と社員の距離が近くなるコミュニケーションを取ることもできるでしょう。
例えば、会社の方向性や採用情報を社内ニュースとして配信することで、社員が当事者意識をもって紹介することを促せます。また、社員の興味度合いや紹介数からひとりひとりのエンゲージメントが分かるので、ファン社員のおすすめの声を伝播(でんぱ)させるとともに、個別に適したコミュニケーションを取って建設的におすすめしたい組織を創っていくことができます。
このように、社員をファンにするリファラル採用をテクノロジーで仕組み化して促進することで、現場にマッチした人材へ戦略的にアプローチして採用業務を効率化しながら、社員全員で仲間集めをすることで社員のエンゲージメント向上へつながります。そうすることで、本当の意味で人事を「採用業務」から解放することができるのです。
採用起点にさまざまな問題の解決にも
今回は、採用とエンゲージメントをつなげるリファラル採用についてご紹介しました。社員ひとりひとりが当事者意識をもって自社を友人に紹介する会社を創っていくことがニューノーマル時代の人事に求められる役割であり、このような新時代に適した採用・組織改革の背中を押す意思決定をすることこそが経営者に求められる役割ではないでしょうか。
経営目線で一気にテクノロジー化が進む今こそ、社員のエンゲージメントを高めながら戦略的にリファラル採用に取り組んでみてはいかがでしょうか。
関連記事
- コロナ機に大手でも採用の「社外プロ人材」 人事領域での活用ポイントは?
コロナを機に増えていきそうな、「社外人材の活用」。導入すべき企業や、人事領域で活用するポイントとは? 「人事の複業」として複数社で活躍する「マイクロ人事部長」の高橋実氏が解説する。 - テクノロジーは全てを解決しない 人事担当者が知っておくべき「HR Tech」の実像
膨大な数のサービスが登場した「HR Tech」だが、企業の人事課題を何でも解決する“魔法の杖”として過信するのは禁物だ。熟慮せずに導入したことにより、何も解決せず、またかえって担当者の負担が増大してしまうケースも少なくない。本記事では、複数のあ企業で人事責任者を“複業”し、人事領域に詳しい高橋実氏が、人事担当者として知っておくべき「HR Techの実像」を解説する。 - コロナで広がる採用格差 「採用弱者」にならないために採用担当者が知るべきコト、やるべきコト
新型コロナでこれまで以上に広がっている採用格差。ウィズコロナ、アフターコロナで「採用弱者」にならないために、採用担当者が知っておくべきこととやるべきことはどんなことなのだろうか? 人事領域に詳しい高橋実氏が解説する。 - テクノロジーは全てを解決しない 人事担当者が知っておくべき「HR Tech」の実像
膨大な数のサービスが登場した「HR Tech」だが、企業の人事課題を何でも解決する“魔法の杖”として過信するのは禁物だ。熟慮せずに導入したことにより、何も解決せず、またかえって担当者の負担が増大してしまうケースも少なくない。本記事では、複数のあ企業で人事責任者を“複業”し、人事領域に詳しい高橋実氏が、人事担当者として知っておくべき「HR Techの実像」を解説する。 - 老舗の製薬会社が頼った、月10万円で雇える“オンライン副業人材”
長野県木曽地方で、江戸時代から受け継がれてきた「百草」を胃腸薬として製造・販売する日野製薬。2020年3月からネット通販(EC)の売り上げを伸ばすため、“オンライン副業人材”を採用している。その成果は。 - オフィス出社は5人だけ! リモート主体で社員700人を支える総務業務のコツとは?
ほとんどの社員がフルリモートのキャスター。オフィス出社しているのは5人だけだというその他、700人の社員がフルリモート勤務の同社だが、総務業務などはどのようにこなしているのだろうか。リモートワークのコツと合わせて聞いた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.