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アベノミクス総括 経済成長しても生活は豊かにならなかった真の理由 “いま”が分かるビジネス塾(2/3 ページ)

菅内閣が誕生、筆者はアベノミクスを総括。経済成長したものの生活への好影響感じられず。真因にマクロ経済から迫る。

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 海外との取引が存在する以上、経済成長について自国だけを見るのは無意味であり、相対的に諸外国よりも高かったのか低かったのかが重要となる。諸外国が1.5〜2%の成長を実現しているのなら、0.9%は実質的にマイナス成長と同じと考えてよい。

 この話はマクロ経済学の世界では常識だが、どういうわけかメディア各社は、「日本経済は力強く成長している」という政府の説明をそのまま報じていたので、生活実感との乖離が生じる結果となった。

企業業績は一見上がったが

 このような見解に対しては、日本の企業業績は大幅に拡大したではないかとの反論もあるだろう。だが、本当に企業の業績が拡大したのなら、従業員の賃金も上がっていなければつじつまが合わない。日本は高齢化によって空前の人手不足であるにもかかわらず賃金が上昇していないのは不思議なことだが、このカラクリを解く鍵は円安と減税にある。

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菅内閣のもと、国民の生活は果たして豊かになるか(ロイター提供)

 アベノミクスの主要な政策の一つである量的緩和策によって、為替は一気に円安になった。製品を海外に輸出する製造業の場合、円安になると見かけ上の売上高や利益が増えるので、企業業績は拡大したかのように見える。

 だが、ここで重要なのはあくまで「見かけ上」という点である。本当に輸出(あるいは現地での販売)が伸びたのであれば、販売した製品の数量も増えているはずだ。ところが数量ベースの輸出の推移を見ると、アベノミクスの期間中、輸出はまったく伸びていない。

 つまり、モノの売れ方は変わっていないものの、円安によって日本円ベースの数字が増えたというのが現実である。識者の中には、企業の現場を知らない人も多く、為替の効果であっても業績が伸びているのだから企業は活況を呈しているはずだと考えてしまう。

 だが、商売の現場ではそうはいかない。

 現場で大事なのは、今月は「何台」売れたのか、来月は「何本」売れるのかという「数量」であって、毎日、為替を計算して金額に置き換える人はいない。企業の経営者にとって、為替が円安に振れたことは「(見かけ上の利益は増えるので)ラッキー」とは感じるだろうが、「(数量が増えない限り)当社の業績は力強く拡大している!」などとは考えない。

 安倍政権は企業に対し、蓄積した利益を投資に回さず内部留保として溜め込んでいると批判してきたが、それでも企業側が設備投資に消極的だったのは、現実には業績が拡大していないことを知っていたからである。

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