アベノミクス総括 経済成長しても生活は豊かにならなかった真の理由: “いま”が分かるビジネス塾(3/3 ページ)
菅内閣が誕生、筆者はアベノミクスを総括。経済成長したものの生活への好影響感じられず。真因にマクロ経済から迫る。
法人税減税で利益かさ上げ
企業の業績拡大のもう1つのカラクリは減税である。安倍政権は法人税の減税を繰り返しており、基本税率は30%から20%台前半まで10%近くも下がった。この間、大企業(資本金10億円以上)の売上高は約1割増えたが、税引き後の当期利益は何と3倍にも拡大している。
当然のことながら、当期利益が増えたのは、減税という税金からの補填でゲタを履かせてもらった結果であり、企業側は本当の意味で業績が拡大したとは考えていない。結果として従業員の昇給は見送られてきたというのが現実である。
このように書いたが、筆者はアベノミクスをことさらに貶(おとし)めるつもりはない。
民主党政権、小泉政権、橋本・小渕政権における平均成長率はそれぞれ1.6%、1.0%、0.9%だったので、民主党時代が若干高いだけで、実はどの政権でも成長率に大差はない。
日本経済はバブル崩壊以降、ずっと低成長が続いており、むしろどの政権でも高い成長率を実現できなかったことの方が問題である。こうした経緯を考えれば、菅新政権の課題が、海外並みの成長を実現することであることは明白だろう。
加谷珪一(かや けいいち/経済評論家)
仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。
野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。著書に「貧乏国ニッポン」(幻冬舎新書)、「億万長者への道は経済学に書いてある」(クロスメディア・パブリッシング)、「感じる経済学」(SBクリエイティブ)、「ポスト新産業革命」(CCCメディアハウス)などがある。
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