日本の経理、効率化のカギはBPO 「多すぎる勘定項目」「紙の請求書」を乗り越えるには:リモートワーク推進にも有効(3/4 ページ)
リモートワークが難しいとされる経理業務。経理業務に関するソリューションを提供しているファーストアカウンティングの森社長は、課題として「多すぎる勘定項目」と「紙の請求書」を挙げる。リモートワークやBPOを進めるにはどうすればいいのだろうか。
日本企業で経理業務のBPOが広まらなかった大きな理由は、日本の勘定科目が企業ごとに異なるからだと森氏は分析している。例えば、宅配便料金の請求なら、支払手数料でも運賃でも雑費でも、簿記的に正解となってしまう。領収書であれば、例えば喫茶店でコーヒーを買ったなら、従業員が飲むときは福利厚生で、顧客へ出すときは会議費で切る。消耗品や雑費にするケースもあるだろう。
「日本では一つの領収書や請求書に勘定科目が3〜4個あります。アメリカの場合はほぼ一意に決まるので、ルールベースでBPOできますが、日本ではできません」と森氏。素人考えでは、勘定項目を統一させればいいのに、と思ってしまうが、それも難しいそうだ。
例えば、今までコーヒーやその他の物品で年間100万円の会議費を使っていた企業が、コーヒー代を消耗品費に切り替えることを、経理部門では一貫性や継続性を重視するので嫌うのだという。会議費はゼロになるが、消耗品費が増えるという変化をとても嫌がるのだ。前年対比の数字がずれたり、何も悪いことをしていないのに、恣意的に利益額を操作しているように言われたりするのを、経理は避けたがる。
「確認」までAIで行う会計ソリューションを提供
そんな日本企業の課題を解決するために、ファーストアカウンティングは経理に特化したAIソリューションを提供している。アンケートの結果にもあった、押印業務よりもつらい請求書の支払い業務を支援してくれるサービスだ。
経理会計業務専用AI OCR「Robota」は請求書や領収書、通帳などを読み取り、OCR処理をして会計ソフトに登録するものだ。Robotaを使うためにはユーザーインタフェースが別途必要になるのだが、イチから開発すると導入まで時間がかかってしまう。そこで用意したのがユーザーインタフェースとなる「Remota」となっている。もちろん、バックで動いているのはRobotaだ。
導入の際は、取引先企業に対して請求書をPDFで発行してもらうようにすることが必要だ。請求システムに直接入力してもらうのはハードルが高いが、メールでもらうなら気軽に頼めるだろう。コロナ禍もあり、先方もオフィスに出社して印刷・郵送するよりは、デジタルのまま送ってしまう方が手間が省ける。
ユーザーはメールで請求書が来たらRemotaに転送するだけでいい。RemotaのAIがOCR処理して読み取り、データ化し、API連携やCSVファイルで経費システムに自動入力する。RPA(Robotic Process Automation)と活用して経費システムに自動入力することも可能だという。
最近では、請求書だけでなく領収書の入力・チェックのニーズも高まっているという。A4の紙に貼った領収書をスキャンすれば、Remotaが案件番号を読み取り、経理システムで申請されている金額を取得する。そして、OCRで読み取った金額と突合し、同じであれば自動的に承認する。これだけで、業務のうち7割ほどの自動化ができ、高いROI(投資利益率)を出せるという。
「一般的なOCRのサービスだとなかなかROIが出ないという声をよく聞きます。OCR入力の場合は確認作業が発生するためです。そこで、弊社では確認作業もAIで行っています。一連の作業のうち、7割でも自動化できると結構な効果が出ます。大手企業ですと10人くらいの経理担当者がいますが、その7人分をAI化できるのです」(森氏)
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