日本の経理、効率化のカギはBPO 「多すぎる勘定項目」「紙の請求書」を乗り越えるには:リモートワーク推進にも有効(4/4 ページ)
リモートワークが難しいとされる経理業務。経理業務に関するソリューションを提供しているファーストアカウンティングの森社長は、課題として「多すぎる勘定項目」と「紙の請求書」を挙げる。リモートワークやBPOを進めるにはどうすればいいのだろうか。
「夜の店」「二重請求」怪しい領収書もはじく
Remotaの顧客は大企業が多い。そのため、ビッグデータの解析から始め、個別にカスタマイズできるのも強みだ。勘定科目に関しては数万〜数十万の教師データを提供してもらってAIを鍛えるため、高い精度を出している。
さらに、Remotaでは不正けん制もできる。例えば、米国のタクシーで「レシートプリーズ」というと、5枚も10枚も領収書をもらえることがある。会社員が不正に経費を請求することで小遣い稼ぎをするためだ。その代わりに、運転手はチップをもらえる。日本でも、飲み屋で空欄の領収書をもらい、接待費として申請している人もいるという。
こうした行為に関して、多くの企業では以前には厳密にチェックしていなかったのだが、近年はコンプライアンス強化の流れもあり、全件チェックしようという流れになってきたそうだ。とはいえ、全件をチェックする作業はとても煩雑なので、AIを活用しよう、ということになる。
Remotaでは、飲み屋の空欄の領収書だけでなく、夜のお店でもらった領収書を検知することもできる。スナックとバー、キャバクラなどの区分けをして、領収書から判別している。領収書に書かれる運用会社名と実際の店の名前が違っても見つけられるそうだ。「今はコロナ禍で都知事の要請もあり『(接待であっても)夜のお店に行ってほしくない』という企業で使われています。夜のお店で遊んだ領収書を経費精算してしまい、感染しようものなら会社のブランディングや株価にも影響しますから」(森氏)
会社の規定で、「会議費」に関して、「会議なのだから飲酒はしてはいけない」と決めている場合であれば、会議とかこつけて飲酒しているケースも見つけられる。出張で宿泊したときのミニバーや有料ビデオの利用もチェックして欲しい、というニーズもあるそうだ。
とはいえ、Remotaはあくまでけん制するためのツールという位置付けだ。そのため、怪しい申請があれば即座に摘発するのではなく、「間違えて申請してますよね?」というようなアラートが出るそうだ。森氏は「優しさを持ったAIなんです」と話す。
最後に、経理の今後について聞いた。
「今後、リモートワークの流れになるのは避けられないと思います。また、23年にはインボイス制度が始まるので、今後、請求書のフォーマットが変わるはずです。そんな中『Remota』なら、ファーストアカウンティングという当社名の通り『速い会計』を実現できます。今から経理業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進することをおすすめします」と森氏は締めくくった。
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